手をこまねいて傍観していた宮内庁

だが、その辺りの事実が冷静に検証される機会はなかった。一方的なバッシングだけが拡大し、長期化した。そしてついに、眞子さまご本人が複雑性PTSDとの診断を受ける事態にまで陥った。

さらに秋篠宮殿下のご判断によって、異例ながらご結婚にともなって行われるべき「納采のうさいの儀」など宮家としての一連の儀式も、いっさい取りやめられた。このため、天皇陛下による「朝見ちょうけんの儀」も見送られる、残念な仕儀となった。

その上、法律(皇室経済法第6条)に定められた皇籍離脱に際して「品位保持」のために支出される一時金の受け取りも辞退され、あたかも“石もて追われる”ようにして、眞子さまが海外に渡られる結果になってしまった。

この間、宮内庁当局は何らなすすべを知らず、ほとんど手をこまねいて傍観していたに等しい。当時の宮内庁長官として、山本信一郎氏と西村泰彦氏(現職)の名前を挙げることができる。

思春期にバッシングの“暴風雨”

平成29年(2017年)から令和3年(2021年)というのは、平成18年(2006年)にお生まれの悠仁殿下にとって、ちょうどお茶の水女子大学附属小学校の高学年から同中学校に在校中の時期に当たる。まさに多感で傷つきやすい思春期の真っただ中。その最悪のタイミングで、秋篠宮家をめぐる“暴風雨”に遭遇されることになった。

眞子さまのご婚約内定をめぐる問題に端を発したバッシングは、やがて秋篠宮家全体にまでおよぶ。それによって、未成年の悠仁殿下ご本人の進学先について真偽不明の無責任な情報が飛び交い、あれこれ進路を指図するかのような言説まで見かける。

週刊誌報道の「嘘」

この際、週刊誌における匿名情報満載の皇室報道というものの一般的な水準を見定めておくのも、あながち無駄ではないだろう。その無責任さが露呈した近頃の事例を1つ、挙げておく。

敬宮としのみや(愛子内親王)殿下のご結婚のお相手候補としていわゆる旧宮家系子孫の男子などを取り上げて、各誌がしばらく加熱気味に記事を載せ続けたことがあった。

これについて、加熱報道が続いていた当時、私は厳しく疑念を呈しておいた(プレジデントオンライン4月6日公開)。「失礼ながら“うさん臭い”印象を拭えない」「(お相手とされる)本人に(真相を)尋ねると直ちに『事実でない』と否定されることが分かっている……からこそ、ジャーナリズムとしては当然の手法である当事者への取材をあえて行わないのではないか」などと。

その後、この件については、宮内庁の西村長官自身が部下に詳しく調査させた上で、「嘘」と断定したようだ(『文藝春秋』令和5年[2023年]9月号)。

こうした“嘘”は、これまで他にも多くあったし、残念ながらこれからも繰り返されるだろう。