「呼ばれ方」は人間関係を表す
人をどのように呼ぶか? というのはなかなかに興味深い話です。たとえば、かつての日本の武士はいくつかの名前を持っていました。幼名、諱、仮名、官位などがあり、立場によって「どの名で呼ぶべきか」が決まっていたといわれます。ドラマでも「信長さま!」のようなシーンがありますが、実際には異なると言われています。
そして、呼び方についてこだわるのは日本だけではありませんし、過去のことでもありません。最近の海外の小説を読んでいるとこんなセリフが目に入りました。
「これからどうするつもり、ハービンダー?」ナタルカが刑事をファーストネームで呼んでいるのがベネディクトには信じられない。昨夜本人がそう呼んでくれと言ったのだとしても。
(エリー・グリフィス著・上條ひろみ訳『窓辺の愛書家』創元推理文庫)
「ドナって呼んでもいいかい、ラブ?」
「ドナって呼んでもいいですけど、ラブとは呼ばないでください」
(リチャード・オスマン著・羽田詩津子訳『木曜殺人クラブ』早川書房)
ファーストネームをどう呼ぶか
両方ともイギリスの小説で原著が発行されたのは2020年です。どちらの小説にも、呼称について書かれた箇所は他にもありますが、すべて「ファーストネーム」に関わるシーンです。
そして、ファーストネームで呼ぶ許可を求めたり、逆に「呼んでください」と言ったりすることもあります。どちらにしてもファーストネームで呼び合うことは、親しさを表しているのです。
ちなみに「ラブ(loveまたはluv)」というのは「愛情を込めた呼びかけ」であることが英和辞典にも載っています。
海外においても「どう呼ぶか、どう呼ばれるか」が人間関係を表していることはあらためてわかっていただけたと思います。
では、会社で「さん付け」を奨励することは本当に組織にとってプラスになるのでしょうか。