「退職金辞退」は川勝知事によるパワハラでは

2015年8月から2019年7月までは元県経済産業部長の土屋優行氏、2016年4月から2020年4月までは元知事戦略監の吉林章仁氏が副知事を務めている。

吉林氏の副知事人事が審議された2016年2月県議会で、川勝知事は「土屋氏とともに、吉林氏も退職金を辞退すると聞いている」などと、就任前から吉林氏の退職金辞退が既定路線となっていることを明らかにした。

副知事の退職辞退で川勝知事の越権行為の疑いを追及した桜井県議(=静岡県議会本会議場)
筆者撮影
副知事の退職辞退で川勝知事の越権行為の疑いを追及した桜井県議(=静岡県議会本会議場)

このため、桜井県議は2018年12月県議会で、「退職金を辞退するということは絶対的な権力者である知事が暗に副知事を指名する代わりに退職金を辞退させる、あるいは辞退せざるを得ないよう忖度そんたくを誘導したとしか考えられない。まさしく今風のハラスメントと言わざるを得ない」と、退職金辞退は川勝知事から「踏み絵」を迫られたのだと批判した。

知事が受け取り副知事が辞退する事例はほかにない

現在の副知事はいずれも静岡県庁OBの出野勉氏、森貴志氏。

森氏の場合、前任者が辞めてから1カ月以上も空白が続いた。川勝知事は調整中としていたが、実際には、退職金辞退を迫る「踏み絵」が問題で副知事の選任が遅れたのかもしれない。

現在のところ、出野、森の両氏が退職金を辞退するのかどうかははっきりとしていない。

静岡県議会本会議場で川勝知事の隣に座る出野、森の両副知事
筆者撮影
静岡県議会本会議場で川勝知事の隣に座る(左から)森、出野の両副知事

全国的に見ても、知事が退職金を受け取っているのに、副知事が自主的に退職金を辞退している事例はない。

川勝知事と同じ2009年に初当選した山形県の吉村美栄子知事は、1期目は公約通りに退職金約3150万円を辞退した。

2期目に就いた記者会見で、「退職金をもらうつもり」と発言した報道が流れると、多くの県民が猛反発した。結局、吉村知事は退職金辞退を決めている。3期目も退職金を辞退、2021年から4期目に入ったが、現在のところ、吉村知事は態度を明らかにしていない。

同県庁OBが務める副知事たちは当然、任期4年ごとに退職金を受け取っている。