増員した副知事は「退職金辞退」を表明
2009年に初当選した川勝知事は、選挙公約で退職金4090万円を全額返上すると表明、そのための条例案が2012年9月県議会で可決された。
公職選挙法の規定で政治家の知事は、勝手に退職金を辞退することはできないため、特別職の条例変更で対応した。
川勝知事は1期目途中の2012年2月県議会で、これまで1人だった副知事を3人体制にすることを提案した。これに対して、公明党県議から「行政改革を推進してきた知事は退職金を辞退する決意だ。同様に、副知事の退職金を廃止すべきではないか」と迫られた。
川勝知事は「副知事が退職金を辞退することが1つのやる気の条件になる」などと応じて、副知事3人体制になれば、副知事は退職金を受け取らないとした。
この知事発言を受けて、2012年4月に副知事に就いた大須賀淑郎・元県企画広報部長は記者会見で、「自らの意思で退職金を辞退する」と明言した。副知事の任期は4年間で、退職金は約2000万円だが、大須賀氏はこれを受け取らないとした。
川勝知事が2期目の退職金約4060万円を受け取ると表明
ところが、2年後の2014年12月県議会で、川勝知事が2期目の退職金約4060万円を受領することを表明したため、大須賀副知事に「退職金辞退に変わりないのか」と矛先が向いた。
大須賀氏は県議会で「自らの考えで退職金を辞退したが、もちろん制度上は条例化されていて、副知事の退職金は支給される決まり。退職金は法解釈上、賃金の一部であり、本来月例給で支給されるべきものを退職時に一括してもらう性質なので、後進の副知事は、私の判断に関係なく自らの判断で対処してほしい」などとあまりにも苦しい答弁をした。
公務員は法律、条例に厳格に従うはずなのに、大須賀氏は個人の意思で退職金を辞退するというのだ。
「副知事が退職金を辞退することが1つのやる気の条件」とした川勝知事が大須賀氏を副知事に指名する際、大須賀氏は退職金辞退を強制されたのではないか、と多くの県議らが疑念を抱いた。
2015年12月県議会で、桜井勝郎県議(無所属)は「知事は2014年の特別職報酬審議会の答申を受けて、退職金を受け取るとした。同様に審議会は大須賀氏にも受け取るよう答申している。大須賀氏は退職金を受け取って、福祉関係などに寄付すれば問題はない。知事が受け取れ、と言えばいい。知事次第だ」などと指摘したが、結局、大須賀氏は2016年4月、退職金を辞退した。
大須賀氏からすれば、川勝知事が2期目の退職金約4060万円を受け取ると表明するとは思いもしなかっただろう。川勝知事が退職金を受け取るのであれば、副知事である自分も退職金を受け取るのが筋だと内心では考えたはずだ。