フリーランスという自由を選んだら無保障は我慢すべき?
役に立ったのは、複雑な書類なしで個人事業者に対し上限100万円まで支給された持続化給付金だった。だが、これは不定期で次にいつ来るかわからず、長引くコロナ減収を支え切れない。「母親支援にはほど遠い。フリーは自力で踏ん張るしかないのか」とチナツは言う。
このような訴えに、会社員からは「やりたい仕事で自由に働けるんだから、不安定なのはしようがない」という反発がしばしば起きる。
だが映画業界で働くフリーランスは、「やりたい仕事で自由に働く人」というより、「複数の会社をまたぎ、不定期な労働時間で働くことを求められるような業界で働く人」にすぎない。身一つで働き、会社の指示に逆らうわけにはいかない点では会社員と変わらない労働者だ。だが、会社員のような長時間労働を防ぐ規制はなく、求められれば365日24時間でも働き続ける。手当も込みの固定給制度が多いため、労働時間で割ると最低賃金を下回ることもある。
究極の自己責任論がまかり通り、フリーの立場は弱い
そんな「究極の自己責任」の世界では、図表3のように、産休手当や育休手当をはじめとする働く女性のための保護もほとんどなかった。その結果、業界では出産を機にやめる女性も多く、技能のあるベテラン女性が育ちにくい。
労働時間規制などの生活や健康を守るルール、仕事を失った時の最低限の支えは、どんな働き手にも必要なはずだ。それが、フリーランスの働き方に見合う形では整備されてこなかった。一斉休校に伴う補償制度の要件が実態に合わないのも、根底に、そのような「すべての働き手を守る」という発想がないからではないのか。
しかも、女性の場合にはここに「家計補助論の壁」が加わる。わかりやすい例が、休校に伴う補償が雇用者の半額とされた時のフリーランス協会の見解だ。ここでは「休校理由でお仕事を休業している方の大半が女性であり、家計の担い手ではない」などの実態から「総合的に勘案すればフルタイムの会社員と同等の休業補償はtoo much」(「フリーランス協会」ブログ、2020年3月17日付)と、半額もやむなしとも読める記述がある。