「いきなり結婚族」の増加
③ 「早婚願望」が高まっているから
3つ目の理由は、この10年の間に、ゆとり世代(筆者定義。’88~’94年生まれ/現29~35歳)やZ世代(同。’95~’04年生まれ/現19~28歳)の未婚女性の間で「早婚願望」が顕著に高まっており、彼女たちの一部が「恋愛と結婚は別」などと口にし始めたからです。
マスメディアも’16年ごろから、交際を経ずに結婚する「交際0(ゼロ)日婚」や「スピード婚」の特集を組むなど、若者の早婚願望を報道するようになりました。同年11月24日放映の『クローズアップ現代+』(NHK総合)では、恋愛プロセスを飛ばして結婚を目指す若者を「いきなり結婚族」と紹介し、大いに反響を呼んだほどです。
若者の早婚願望は、複数の調査結果からも分かります。三菱総合研究所が20代の未婚男女に「30歳までに結婚したいか」を聞いた調査で、「YES」と答えた男女の割合が、男性では’16年に、女性では’17年に、いずれも上昇に転じました。’17年における同回答は、男性で約5割(50%)、女性で約7割(68%)で、女性のほうが約2割多い様子も見てとれます(図表2)(’11~’17年 同「生活者市場予測システム(mif)」)。
妊活ブームで結婚への焦りが強化された
また、ある情報サイトが大学生(含・短大生)に行なった調査では、「25歳前後で結婚すること(早婚)」に「メリットを感じる」と答えた男女が、全体のほぼ半数(49.8%)にのぼりました(’18年 ウエディングパーク「『若者の恋愛結婚観』に関する実態調査」)。国立青少年教育振興機構の調査結果でも、20~30代の未婚者、とくに女性で「早く結婚したい」と答えた割合が4人に1人を超え(25.5%)、男性(12.1%)の2倍以上に及んでいます(’16年 同「若者の結婚観・子育て観等に関する調査」)。
こうした傾向には、’11年以降、大学など教育現場でも強化されるようになった「キャリア教育」や、近年高まりを見せる「妊活(妊娠に向けた活動)」ブームが、少なからず影響しているでしょう。とくに妊娠については、「不妊治療」を受ける先輩や上司を目にするなどし、「35歳までに一人目(の子)を産まないと」などと焦る気持ちが高まり、「結婚も早いほうがいい」と(出産を)逆算して考える女性が、明らかに増えた印象です。
なにしろ、昨今は「36歳未満と36歳以上の女性を比べた場合、同じ20個の卵子があっても、赤ちゃんの誕生に結びつく確率が顕著に減少する(約70%→約50%)とみられる(*2)」といった残酷な統計確率まで示されるようになりました。出産の「期限」が“見える化”されたことで、「タイムリミットが近づくのが怖い」と焦る女性も、決して少なくないのです。
*2 日本産科婦人科学学会サイト/ A Cobo, et al: 2018 Elective and Onco-fertility preservation, Hum Reproduction, 33, (12)