「続けるか」「辞めるか」以外の第3の選択肢

ここまで、退職後は働かないことを前提に健康保険の選び方を考えてきました。しかし、もっと柔軟に、どういう働き方なら保険料の負担を減らせるかという視点で考えてみたいと思います。

すでに定年を迎えて再雇用で働いている人の多くは、定年前より収入が激減しますので、今後の生活設計に悩んでいます。たとえば、

「このままモチベーションを保って働き続けられるのか」
「あまり収入にはつながらないけれどボランティア活動に軸足を移したい」
「これまでのスキルを活かして起業をすることも視野に入れている」

など。

共通するのは、たとえ働き続けても収入が減るのは不満。とはいえ、安定収入を手放して、その後の暮らしは回っていくのかという不安です。

そこで提案したいのが、「辞めるか」「続けるか」ではなく、「ちょこっとサラリーマン」を軸にして、「ちょこっとボランティア」「ちょこっと起業」など、個人事業主としての「ちょこっとⅩ」を組み合わせることです。

仕事を続けるか退職するか選ぶビジネスマン
写真=iStock.com/takasuu
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「ちょこっとサラリーマン」のススメ

「ちょこっとサラリーマン」とは、ギリギリ社会保険の加入対象となる働き方をすることです。一般的には、週の所定労働時間および1カ月の所定労働日数が、常時雇用者の4分の3以上である人が対象ですが、短時間勤務のパートやアルバイトであっても、以下の要件に該当すれば、社会保険の加入対象となります。

1.週の所定労働時間が20時間以上
2.2カ月を超える雇用の見込みがある
3.賃金月額が8万8000円以上
4.学生ではない
5.従業員規模が101人以上の事業所に勤めている

5.については、2024年10月以降、「従業員規模51人以上」に拡大します。無理して長く働かなくても、社会保険に加入できる範囲はさらに広がります。

たとえば、60歳以降の給与収入を300万円とした場合、健康保険と厚生年金保険料の負担は合わせて約47万円です。仮に「ちょこっとサラリーマン」になって、給与収入が150万円になると、保険料は約23万円に減ります(※4)。そして、サラリーマン以外の時間を「ちょこっとⅩ」にあて、どんなに高額の事業所得を得られるようになっても、保険料は約23万円のままで増えることはありません。

※4 協会けんぽに加入として計算