ウクライナはなぜEUに加盟できないのか。国際政治学者の舛添要一さんは「ウクライナはロシアと同様に賄賂なしでは事が進まない。汚職を追放しなければEUに加盟できないため、ゼレンスキー大統領は汚職撲滅に躍起になっている」という――。
※本稿は、舛添要一『プーチンの復讐と第三次世界大戦序曲』(集英社インターナショナル)の一部を再編集したものです。
戦争の最中にも汚職がはびこる
1月21日、ウクライナのインフラ省のヴァシル・ロジンスキー副大臣が罷免された。
発電や暖房関連の設備調達に関して、契約額をつり上げ、業者を潤した見返りに、35万ドル(約4600万円)超の賄賂を受け取ったという。
また、1月24日、ウクライナでは多数の政府高官が解任された。贈収賄などの汚職が原因である。
ロシアとの戦争の最中に汚職がはびこるということは、常識では考えられないことである。ウクライナ国民が苦難に耐えて一致団結して抗戦しているという「美しい神話」が世界中に流されていただけに、驚きを以てこのニュースを受け止めた人が殆どだろう。
ウクライナでは汚職は日常茶飯事
しかし、実はウクライナでは汚職は日常茶飯事なのである。
解任された高官をリストアップする。
まずは、大統領府のキリロ・ティモシェンコ副長官である。彼は高価なスポーツ用多目的車(SUV)を複数台所有していると非難されていた。これらの車はアメリカの自動車メーカーが住民避難用に提供したものである。
次に、ヴャチェスラフ・シャポヴァロフ国防副大臣は、軍用食料品を小売価格よりも高値で調達していたという。無名の食品会社だっただけに、贈賄が疑われている。
なお、オレクシイ・レズニコフ国防相も同じことを疑われている。
オレクシイ・シモネンコ副検事総長も解任された。正月にスペインで10日間の休暇を家族とともに過ごしていたという。成人男性の出国が厳しく制限される中での出来事である。