慶應の優勝は高校野球の大きなターニングポイントになる
第105回全国高校野球選手権大会は、慶應義塾高校の107年ぶりの優勝で幕を閉じた。慶應応援団の大がかりな応援や、森林貴彦監督のユニークな指導法などが大きな話題となったこともあり、観客動員は前回大会を大きく上回りそうだが、筆者はこの大会は「高校野球が変わるターニングポイント」になるのではないかと見ている。
あまり話題にならなかったが、今回の夏の甲子園には、慶應高、おかやま山陽高、東京学館新潟高、立命館宇治高と、4つの「Liga Agresiva」参加校が出場した。
Liga Agresivaについては、当コラムでも紹介したが、高校野球のリーグ戦であり、秋季大会が終わった10月下旬から対外試合が禁止になる11月末までの期間、各県単位で行われている。
ただのリーグ戦ではない。「高校球児の将来」を考えるとともに、選手が「いつまでも野球好き」でありつづけられるために、さまざまな工夫がされている。
木製バットを使った試合
まず、リーグ戦では「低反発の金属バットまたは木製バット」を使用することになっている。日本高野連も来季から低反発金属バットを使用することになったが、これまでの高校野球は、高反発の金属バットで本塁打を量産する球児が話題になってきた。
そうした選手は木製バットを使う大学、社会人、独立リーグ、プロでバットのギャップに苦しんできた。また木製バットを使うU18の世界大会でも、甲子園で活躍した選手たちが他の国の投手を攻略できず打撃不振にあえぐ姿がしばしば見られた。日本高野連はそのギャップを解消するために低反発バットに変更したが、それに先立つバットの改革だ。
そして、日本高野連の基準よりはるかに厳しい「球数制限」を導入した。選手の肩ひじの酷使を未然に防止するのが目的だ。
さらに、原則として「全員出場」を基本とした。強豪校では3年間試合に出られない部員も珍しくないがLiga Agresivaではどんな選手にも必ずチャンスが与えられる。また一度試合から退いた選手が再出場できる「リエントリー制度」を導入しているリーグも多い。