受講していたある講義

そして何よりユニークなのは、参加校の全選手が「スポーツマンシップ」の講義を受講することだ。スポーツの基本姿勢である、チームメート、相手選手、ルール、審判へのリスペクトを基本に、スポーツは何のためにするのか? をしっかりと学ぶ。これによる意識の変化が何より大きいかもしれない。

スポーツマンシップ講座の講師は、立教大准教授で、日本スポーツマンシップ協会の中村聡宏代表理事が担当する。中村氏は慶應義塾普通部で、慶應高の森林貴彦監督とクラスメートだった。中村氏はラグビー部、森林監督は野球部だったが、そのころから切磋琢磨せっさたくまする間柄だった。

今回、Liga Agresiva出場校が地方大会を勝ち抜く大きな要因になったのは、このスポーツマンシップ講座ではないかと筆者は考えている。

スポーツマンシップの考え方では、人にやらされるのではなく、自分の意志でスポーツをする。また、勝利だけをガチガチに追求するのではなく、相手チームの選手への心配りも学ぶ。

負けたからといって大きく落ち込んだり、勝ったからといって傲慢ごうまんな態度を取ることも、スポーツマンシップ的にはあり得ない。勝利に向かって懸命に努力しながらも、試合が終われば相手をたたえるゆとりがある。

なぜ相手チームのプレーに拍手したのか

今回の甲子園でも、慶應高の選手が、相手チームのファインプレーに対してベンチから拍手を送るシーンが見られた。スポーツマンシップによって、大舞台に立っても、相手を思いやったり、審判をリスペクトするのは、心のゆとりがあるからだろう。

また、やらされるのではなく主体的に動く積極性も身に付く。さらに練習でも主体性を重んじ、軍隊式のやみくもなハードトレーニングではなく、選手個々に合わせた合理的な練習も行うようになる。

阪神甲子園球場
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これまでの「上意下達」の高校野球では見られなかった意識変革によってLiga Agresiva出場校は、甲子園まで勝ち抜いたのではないか。

8年前に大阪で始まったときはわずか数校だったが、今では全国28都道府県、158校にまで広がっている。今回4校が甲子園に進出したことで、「Liga Agresiva」の参加校はさらに増えるだろう。