「エトス・パトス・ロゴス」が説得の条件

アリストテレスは著書『弁論術』(岩波書店)の中で、言論を通してわれわれの手で得られる説得には3つの条件があると言っています。

【図表】説得の3つの条件
① 話し手の人柄(=エトス)
② 聞き手の気分(=パトス)
③ 内容の正しさ(=ロゴス)

「話し手の人柄」「聞き手の気分」「内容の正しさ」は弁論術においてそれぞれ「エトス」「パトス」「ロゴス」と呼ばれています。

人は同じ内容の話でも誰が言ったかによって、受け入れようか否定しようか変わってくるのではないでしょうか。

「同じ内容なのにあの人の意見ばかり通るのはなぜだろう」
「自分がミスしたら怒られたのに、彼が同じことをミスしても怒られないのはなぜか?」
「彼の頼みは1日でやってくれたのに、なんで自分の依頼は4日もかかるの?」
「同じミスをしてAさんはこっぴどく怒られたのに、彼は何のお咎めもなかった」

多少実績の差など他の要素が加味されている場合もありますが、たいていはその本人に好感を持っているか、あるいは信頼しているかがポイントになってくるのではないでしょうか。

まさに話し手の人柄(エトス)に左右されますね。

「人」から共感される人3つの共通点

また、人はこんな人に共感します。

①ブレない(平常心を乱さない)

人が信頼を失くすのは非常事態の時です。

たとえばクレームの報告をした時、上司の器が見えるといいます。

ここで取り乱したり逃げたりする人は信頼を失います。

とにかく何かが起きても人前で心を乱している様子を見せないことが重要です。

②人によって態度を変えない(平等性)

立場の強い人には低姿勢で、自分より下の立場の人には強気でいるような忖度タイプの人は、いざという時に協力してもらえません。

どんな人とも平等に接する、これは非常に重要なことです。

③反応する(無視しない)

ほほ笑まれたらほほ笑み返す。メールが来たら返信する。この当たり前のことをしているか、していないかが実は大きな差になります。

なぜなら、人は承認欲求を強く持っており、これが満たされないと不満足になるからです。

どんなに正論であっても、人は嫌いな人の言うことには耳を傾けないものです。

エトスは難しいことに日々の蓄積が求められますが、継続していきましょう。