日本は第一志望国ではなくなった

かつて中国からの技能実習生が最多だった時期がある。ただ中国が経済成長したり、日本以外の選択肢が増えたりしたことから減少。ベトナムからの実習生が最多になっていた。しかし中国で起きたことはベトナムでも起きる。ベトナムの経済成長が続き、他国の成長はいうまでもなく、昨今は円安の問題もある。

円安は落ち着きを見せるが、中長期的には日本の凋落は避けられないと見る向きも多い。日本は技能実習制度だけでは外国人に訴求性がないと考え、特定技能を導入した。これは8割が技能実習生から移行するもので、在留期間も延びる資格があり、さらに転職も可能だ。しかし受け入れ数は、予想数にまったく届かない。

最大の送り出し国であるベトナムでも、候補者不足が恒常化している。そこでベトナムの送り出し機関で働くベトナム人幹部に聞いた。

「これは統計には表れない、ベトナム人の希望なんですけれど、10年くらい前は100人いたら95人は日本に行きたいと言っていました。しかし、現在は50人くらいかなと思いますね。第一が日本ではなく、オーストラリア、ドイツ、韓国だという人はたくさんいますね。製造業もそうですけれど、とくに建設とか農業で日本行きを希望する人がいなくなりましたね。

正直に言えば、日本を希望する候補者のレベルは下がっています。他国の条件がいいですからね。日本で失踪するベトナム人が話題ですが、韓国に行ったベトナム人も失踪していました。韓国は候補者の出身地を重視するんですよ。過去に失踪した地域出身なら、また失踪するかもしれない、と。ただし韓国は日本のように技能実習生として受け入れるわけではなく、正規の労働者なので、その代わりに条件もいい」

日本と韓国の月収差は3万~6万円程度

賃金の話を補足しておくと、あくまで一つの送り出し機関の例であり為替レートも変動するものの、ベトナムの若者が日本に行くと月収が16万円から19万円だという。必死にがんばっても月収は20万円を少し超えるていど。ただし韓国に行くと19万円から25万円ほどだという。

日韓の国旗
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ベトナムの労働相は日本で働く技能実習生の手取りを増やすため、日本の厚労相にたいして、住民税や所得税の控除を依頼するほどだった。いっぽうで、韓国では雇用許可制(EPS:Employment Permit System)という制度がある。これは、文字通り研修生としてではなく労働者として受け入れる仕組みだ。

さらに民間ブローカーが排除されるケースもあり費用が抑えられる。私はここで、ベトナム人候補者が減ったのは日本で技能実習生を受け入れる職場の労働環境が悪いからではないか、と質問してみた。日本では労働環境問題にくわえて、妊娠や出産など、個人的なことまで管理される場合がある。

参考までに追記しておくと、技能実習生を受け入れている企業の労働法令違反率と、全体の違反率は同程度という指摘がある。つまり技能実習生の受け入れにかかわらず悪しき日本企業は一定数が存在する。ただし、だからといって法令違反の企業があっても仕方がない、という結論にはならないだろう。