なぜ年間9000人もの失踪者が出ているのか

日本企業は支払う場合もあるし、渋る場合もある。日本の法的制度で技能実習生制度は認められているし、技能実習生から支払いの領収書を提示してもらえるケースはほとんどなく、株主への説明を考えると根拠なく支払うことはできない。外国人技能実習生がせっかく来てくれても定着が問題になる。このところ実習中の失踪者が話題で、年間9千人にいたる場合もある。それは借金ゆえといわれる。

働いても借金を返せないとわかった技能実習生たちはより賃金の高い仕事を求めて行方をくらます。しかし当然だが「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」では技能実習生自体を否定しなかった。技能実習生への賃金の差別をしたり、パスポートを保管したり、貯蓄金の管理をする契約をしたりするな、と注意にとどめた。

もう一度、技能実習生の雇用・受け入れを主とするコンサルタントに聞く。

「日本人は技能実習生を機械のような働き手とみなすでしょう。出国するときに聞いた仕事ではない業務を任せられるし、孤独。夜間労働で割増賃金が支払われない。さらに彼らの多くは暑い国から来ているんですよ。日本の寒い地域で、しかも日本の同僚とも交流しない環境に住んでいる。そこに留められるはずがないですよ。よく地方自治体の職員から対策を質問されるけれど、口をつぐんでしまうのが実情です」

日本の国旗と景気低迷の概念
写真=iStock.com/ronniechua
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高度人材の獲得でも買い負けている

現在、日本は次のターゲットとしてミャンマーを定めている。私は個人的にミャンマーの送り出し機関を訪ね、現地の若者と会話をする機会を得た。人柄もなつっこく、日本語学習にも真剣で、国民性としても勤勉だ。しかし、根本的な問題を解決しなければ、ベトナム人が愛想をつかすように、ミャンマー人も同じことになりかねない。

なお、これまで技能実習生を中心に説明してきた。いっぽうで、高度人材の獲得についても日本がその労働力を買い負けているのが現状だ。そこで世界の代表都市との比較を見てみよう。図表1は月間の報酬をドルで計算したもので2022年を中心に調査した。「中間管理職(課長クラス)」の高い順に並べたものだ。

【図表1】世界各都市における中間管理職(課長クラス)の月間報酬ランキング
出所=『買い負ける日本

日本の中間管理職は2〜4倍ほど報酬で負けている。他のアジア勢とは善戦しているともいえるものの、彼らの経済成長と賃金の伸びを考えると数年後にはもっと下位にランキングされるだろう。高度人材が日本に来てくれるどころか、日本の優秀な人材も海外に飛び立とうと考えるだろうし、実際にそうなっている。