地域偏在を解消し、非科学的な精神論はやめる
すなわち保険適用となることで、現在では地域差のある出産費用が、全国一律の“公定価格”となり、また応能負担の原則のもと、低所得者が費用面から出産を諦めざるを得ない状況は、改善に向かうことが期待できそうです。
ただその場合も、無痛分娩にも保険が適用されるかは、現時点では不透明です。与党国会議員のなかには「無痛分娩にも健康保険適用を」と訴えている議員もいるようですが、保険適用とするからには、この国に住まうすべての妊産婦さんにたいして、可能なかぎり公平にサービスが享受できる機会をもうけなければなりません。
“全国一律”という医療保険制度のなかで、無痛分娩実施可能施設の地域偏在をどのように解決していくのか、という困難な問題については、今後もさまざまな議論が必要となってくるでしょう。
このように無痛分娩にかぎらず、妊娠出産にかかる経済的問題については、当事者にかぎらず、多くの人が「自分ごと」として議論に加わっていくことも重要ですが、その議論のなかで、少なくとも私たちすべての世代の意識のうちから、「母親たるもの出産の痛みくらいは我慢して当然」という、あまりにも日本らしい非科学的精神論をまず消し去り、妊産婦さんに“優しくない”風土をまず変えていかないことには、少子化に歯止めをかけることなど到底不可能なのではないか、高齢者医療に身を置く者として私はそう考えています。