今、「無分別」という言葉を使いましたが、分別があるとは、ひたすら節約するとか計算高いとかいう意味ではありません。大切なこととそうでないことを見分ける力があるということです。おカネを使う場面は、その恰好の訓練の機会となります。

節約というのは、やっているうちに楽しくなってきて、止められなくなるところがあるようです。本人が楽しいならいいという側面もありますが、やはりおカネに関しては「使ってなんぼ」。使わなければ、おカネを活かすことは決してできません。

おカネの価値は、それで何かを得られるところにあります。「おカネを使わない」ではなく、「上手に使う」にシフトしたほうが、人生ははるかに豊かになります。

投資や投機とは異なるおカネの使い方がある

近年は、応援したい人や事業に「クラウドファンディング」という形でおカネを提供することが一般的になりました。インターネット上で「こういうことをしたい」と表明すれば、見ず知らずの人たちが出資してくれて、大きなおカネを集められる仕組みです。それなりに普及しており、おカネの動き方としては興味深いものです。

「クラウドファンディング」と書かれたノート
写真=iStock.com/designer491
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大手クラウドファンディングのサイトを見ると、「自分の音楽CDをつくりたい」「こんな便利なグッズを開発したい」「築100年の古民家を保存したい」「捨てられたペットの保護費用を集めたい」など、実にさまざまなプロジェクトが掲載されています。

こういった大きな事業は、かつては借金なしにできるものではありませんでした。しかし、クラウドファンディングができたことで、一人でも、小人数の団体でも、夢を実現しやすくなったのではないかと思います。

プロジェクトが成立すると、出資した人たちには何らかのリターンがあります。たとえば、「完成したCDを一枚あげます」とか「イベントの入場券をあげます」などというお返しが、あらかじめ提示されているのです。中には「お礼状を出します」とか「メールでお礼します」などという、コストのかからないリターンもあります。

ここが投資や投機と違う重要な点です。

誰かの夢を応援することができる

投資や投機における株の配当金のような大きなリターンは、クラウドファンディングでは期待されていないのです。自分が応援したいからおカネを出すだけで、見返りがなくてもいい。「おカネを増やそう」という投機的なニュアンスはありません。

かといって、ただ寄付をするのとも違います。自分が出資したおカネがどう使われ、プロジェクトがどのような結果を出したのかが出資者に明示されます。見返りはなくてもいいけれど、達成したことの喜びを共有したいという気持ちに応える仕組みなのです。