組織のリーダーはどんな役割を果たすべきなのか。ラグビー日本代表キャプテンの姫野和樹さんは「下を育てる、自分の経験を伝える、といった聞こえのいいことを言うのではなく、わがままに思いを貫くべきだ。その姿が結果的に、次の世代を育てることになる」という――。

※本稿は、姫野和樹『姫野ノート 「弱さ」と闘う53の言葉』(飛鳥新社)の一部を再編集したものです。

ラグビー日本代表の姫野和樹選手
撮影=岡本武志
ラグビー日本代表の姫野和樹選手

「次のリーダーを育てる」は本当に大切か

スポーツに限らず、ビジネスの世界、会社組織でも管理職の間でよく語られているリーダー論がある。

「リーダーの一番大事な仕事とは、“次のリーダー”を育てることだ」

たしかに重要な役目だとは思う。

僕は社会人1年目から6年以上も同じチームに在籍して、その間、ずっとキャプテンを続けてきた。チームの中で影響力が一番大きい選手だと自覚しているし、29歳になって、年齢的にも中堅というポジションになってきた。

すると、たしかに最近は僕の中でも、そういう考えが大きくなっていた。

「もっと下の世代、次のリーダーを育てなきゃいけない」
「若手にもリーダーのポジションをやらせてあげて、経験を積ませないといけない」

自分が楽なほうに逃げているだけではないか

特に2022-2023シーズンはキャプテンをピーターに任せていたこともあって、僕自身がどんどん前に出たり、リーダー的立場から発言することを意図的に控えていた。

育てるほうに立ち位置を変えていた。

リーダーシップとは、ある意味でそのリーダーの“わがまま”だ。「こうしよう」という自分のわがままを押し通すことで、チームや組織を引っ張っていく。僕はそのわがままを押し通すことを少なくして、あえて一歩引いたところでチームを支えよう、そんな役割に自分をシフトしようとしていたのだ。

「下を育てる」という名のもとに、中心になることを譲っていたわけだ。

でも、それは間違いだったと僕は思う。

「次を育てる」という考え方は結局のところ、「逃げ」だ。自分が楽なほうに逃げているだけだ。