頭がいい人はメタボ予防に過剰に反応しない

2009年に日本で発表された研究結果では、40歳時点の平均余命が最も長かったのは、男女ともにBMIが25~30の人でした。

一方、平均余命が最も短かったのは18.5未満の人です。両者の間の平均余命を比較すると、男女ともにBMIが高い人のほうが、6~7年ほど長生きすることが判明しています。

2006年にアメリカで行われた「国民健康栄養調査」でも、BMIが25~29.9の人が最も長生きであり、18.5未満の死亡率はその2.5倍も高かったのです。つまり、ちょっとぽっちゃりした小太りの人がいちばん長生きしていることがはっきり表れています。

もちろん、BMIが30を超えるような太りすぎになると、心筋梗塞などのリスクが高まりますから、程度の問題です。それでも、やせている人より平均余命は長いので、いかにやせることが危険であるかがわかるでしょう。

アメリカでは、太りすぎて歩けなくなったり、手術で食事による栄養摂取を制限したりするといったケースがよく見られますが、日本ではそんな人はまずいません。せっかくいい状態にあるのですから、やせる必要などまったくないでしょう。

小太りの中高年が、メタボ予防のためにやせなければいけないとか、メタボが怖いから肉は控えようと過剰に反応するのは、「頭がいい人」の行動様式ではありません。

いまだにダイエット本が次々と登場して、新奇なやせ方を紹介しています。そして、テレビが、それを情報番組などで放送するわけです。データに基づいて判断できる「頭がいい人」は、惑わされることなどないでしょうが、そうでない人をミスリードする。

こうした出版や報道のあり方に、私は大きな疑問を感じています。

肉食を控えることは死を招く

厚生労働省の調査によると、いま70歳以上の日本人は、じつに5人に1人がタンパク質不足だといわれています。高齢者は肉を控え、野菜中心の食事が体にいいと思い込まされた結果、タンパク質が不足しているという事情もあるのでしょう。

欧米化してきたといわれる日本人の食生活ですが、それでも1日当たり100グラムほどしか肉を食べていません。

これに対して、アメリカ人は300グラムほど食べています。このくらい食べているなら、その量を減らして肥満や動脈硬化を抑え、虚血性心疾患を減らそうとするのもわかります。

リブロース肉
写真=iStock.com/naturalbox
※写真はイメージです

しかし、1日当たり100グラムにも満たない日本人の場合、まして食の細くなっている高齢者ならなおさら、もともと少ない肉をさらに控えてしまうことになります。

昭和50年代半ばまで、日本人の死因トップは脳卒中(脳血管疾患)でした。その頃までの日本人は、タンパク質が不足していたからです。厚生労働省の統計を見ると、当時の日本人は、肉類を1日当たり約68グラムしか食べていません。

本来、若く健康な人の血管は、ゴムのように弾性があるものです。ですが、材料となるタンパク質が不足していると血管はもろくなってしまい、血管が破れやすくなるのです。

かつては一般的だった、ご飯、メザシ、納豆、漬物、味噌汁といった食生活では、塩分が多くてタンパク質が少ないので、血圧は高くなり、血管はもろくなります。これでは血管が破れるのも無理はありません。