1500万人が飢餓で死ぬ
はっきりさせておくが、1959年から1962年まで中国を襲った大飢饉の原因は、スズメの駆除だけではなかった。
複数の恐ろしい決断ミスが同時に重なって、引き起こされたのだ。従来の自給農業から、価値の高い換金作物へと党が命じたことで変化が起こったこと、ソ連の生物学者トロフィム・ルイセンコの疑似科学にもとづく一連の農業の新技術が破壊的だったこと、そして中央政府がすべての農産物を地元の社会から取りあげたこと、このどれもに原因がある。
また、よい結果を報告するようにという励ましが圧力となって、あらゆる階層の役人にのしかかったとき、上層部の官僚のなかには、すべてはうまくいっている、そして国民にはたっぷり食べ物があるという絵空ごとを胸に抱いた者たちもいた。
実際には、何年もの過酷な天候にやられたあとで(国土のあちこちで洪水が起こった一方で、ほかの地域では干ばつが起こった)、国民が食える蓄えなどありもしなかったのに。だがスズメ殺しと、続いて起こった本物の害虫による作物の食害は、襲いかかった大飢饉の元凶だった。
飢餓による死者数の概算は1500万から3000万人。ただでさえ背筋の凍る話なのに、1500万人もの人間の生死がわかりさえしないとは、怖さがいっそう上乗せされる話だ。
このことから学べる基本的な教訓(自然を荒らしてはならない。そうしていいのは、どんななりゆきになるかが前もってよくわかっている場合だけだ。それでも、おそらくはよいことではない)が胸に浸みたと思うだろう。
ところが2004年になって、中国政府はまたしても、ジャコウネコからアナグマにいたるまで、哺乳類の大量駆除を命じた。SARSウイルスの発生を受けてのことだった。このことから、人類は過去の過ちからなかなか学べないことがわかる。
Tom Phillips, HUMANS: A Brief History of How We F*cked It All Up
Copyright © 2018 by Tom Phillips