SNSで短歌を発表すると「いいね」がたくさんつく時代
空前の短歌ブームが、若者の世界にやってきているという。NHK「クローズアップ現代」では、「空前の“短歌ブーム”は何映す 令和の歌に託した思い」(2023年3月14日放送)と題する特集が組まれた。
こういう歌がSNSで発表される。すると、歌の中身に共感した多くの若者が「自分も作ってみよう」という気になる。結果、二次創作を含めてたくさんの歌が作られ、発表され、読まれ、「いいね」されることとなる。
上の2首。1首目は恋愛、2首目は仕事。どちらもさりげなく魅力的だ。
岡本の歌は、若い女性が「僕とつきあってください」と言われた場面。「ほんとうにあたしでいいの?」が最初の正直な反応。「ずぼらだし」までは平凡だが、下句「傘もこんなにたくさんあるし」で、ちょっとぶっきらぼうに、しかも柔らかく、相手に自分を差し出すところがおもしろい。カジュアルすぎるほどカジュアルな語りくちだが、逆にここで主人公が輝いて見えてくる。
Y世代、Z世代のナイーブな心理が読者に共有されている
杜崎は、もともとIT企業に勤めていたが、体を壊してそこをやめて、自転車屋になったという。この1首では「人の翼」という飛躍をこめた言葉に、この人の意地と詩心を見ることができるのだろう。こういうのが、緊張感なくすっと読者に伝わっていく。共感の輪が広がってゆくのである。
以前の短歌は文語で作るのがふつうだったが、1987年に俵万智の『サラダ記念日』が出て、口語の歌が市民権を得るようになった。今や口語短歌はあたりまえに作られている。ナイーブな若者心理を伝えるのに、かっこうの様式となったようだ。
歌壇における新人の登竜門である角川短歌賞(50首詠)と短歌研究新人賞(30首詠)の応募作の数は、図表1、図表2のように右肩上がりを続けている。角川短歌賞は2012年の応募数が565篇で2022年が768篇と約1.4倍に。中でも、10代、20代の応募が増えているとのこと。
短歌研究のほうは、2020年以後、年齢・性別などを記さずに応募するようになっている(個人情報保護とLGBTQへの配慮のためだろう)。実態としては、やはり10代、20代が増えたのだと想像される。
(※2000年以後は、個人情報にあたる「年齢」「性別」を申告しない方針となっている)