売り場の転換

2000年代初頭からビスコはさらなる成長を図る。子どもを対象とした栄養菓子を大人にも届けようとした。

2002年、江崎グリコは小麦胚芽入りクラッカータイプの「ビスコ小麦胚芽入りクラッカー」を発売した。これまでにないサクサクとした生地の食感と、小麦の香ばしさが楽しめる商品だ。「これが女性に大好評となったのです」(吉田さん)

さらに、2010年ごろからは、ビスコの売り場の転換を行っている。

スーパーの幼児ビスケット売り場に置かれていたのを、「ポッキー」や「プリッツ」などが並ぶ一般菓子コーナーに売り場を移動したのだ。

単に売っている場所が変わっただけと思うかもしれないが、実はこれは大きな変革である。幼児用の売り場から一般の菓子へと、競争市場が変わるということだからだ。

その理由を吉田さんは「大人の女性からのニーズがわかったことで、新たな市場に打ち出すことにしたのです」と説明する。

過去最高売り上げを記録

大人の女性を意識した商品として代表的なのが、2015年に発売された「ビスコ<発酵バター仕立て>」だ。その前々年、「80周年スペシャルビスコ」として期間・数量限定で発売されたものがあまりにも評判がよかったことから定番化されたものだという。

ビスコ<発酵バター仕立て>
画像提供=江崎グリコ
ビスコ<発酵バター仕立て>

バターはもともとビスケットと相性がよい。さらに発酵バターを用いることで、バターの風味がしっかり感じられる、リッチな味わいのビスケットだった。

健康関連食品の市場規模拡大と、ビスコが朝に売れているという販売実績から、忙しい女性の朝食需要があると考え、「ビスコ シンバイオティクス」という商品も発売した。

2018年に発売した「ビスコ<焼きショコラ>」も同じ系譜に名を連ねる。ビスケットにカカオマスを練りこんだもので苦みとクリームの甘味のバランスが絶妙な商品だ。

ビスコ<焼きショコラ>
画像提供=江崎グリコ
ビスコ<焼きショコラ>

子どもも大人も楽しめる商品開発、さらに売り場の変更で、売り上げは2014年度~2018年度までの5年間連続して過去最高記録を更新したのだ。