風評被害は食品と関係ないところにも
なお、中国と韓国以外でもう一国、処理水の海洋放出にイチャモンをつけていた国があった。「意外にも」というか、「やはり」というか、ドイツである。
現ドイツの環境省は緑の党が仕切っているが、4月15日、ドイツがエネルギー危機にもかかわらず原発をすべて止めたちょうどその日、日本で開かれていたG7の環境閣僚会議に出席していたレムケ環境相は、東電の処理水放出を批判した。
氏は、その後、福島第1を視察したが、そこでも「処理水の放出は歓迎できない」とのこと。緑の党の政治家は科学を無視する傾向が強い。蛇足ながら、原発を止めたドイツは、現在それを再エネではなく、石炭と褐炭で置き換えているため、ポーランドと並ぶEU最大のCO2排出国となっている。
話を福島に戻す。福島県南相馬市の北泉海岸は、原発事故以前はサーファーに大人気だった。最近ではサーファーも戻ってきており、9月には「Kitaizumi Surf Festival 2023」も開催される。そこで、今年こそ同フェスティバルを国際大会にしようと地元が張り切っていたというが、サーフィンの国際プロ競技団体の公認が得られなかった。原因は処理水の海水放出だという。偏に中国、韓国、朝日新聞などが立ててくれている風評のおかげだ。
いつまで「引き続き丁寧に説明」を繰り返すのか
福島の漁業関係者も海洋放出には批判的だが、主な理由はやはり風評被害だ。福島第1原発の立地地区であった大熊町では、昔は原発からの温排水を利用してカレイやヒラメの養殖をしていたという。こうすると年間を通じて海水が適温に保てるため、稚魚の成長が早いらしい。
2004年の原子力産業新聞第2218号には、高級カレイ「ホシガレイ」の養殖に成功したというニュースがある。彼らは本当は処理水が危険でないことを知っているはずだ。
風評の撲滅は、地方議員が票を失うのが怖くてできないならば、首相以下、中央の担当の大臣が首をかけてもやるべきだと思うが、よりによって与党の公明党の議員が、「放水は海水浴シーズンを避けたほうが良い」と、風評を焚きつける始末。誰かに頼まれたのだろうか。
岸田首相も、「引き続き丁寧に説明」はいい加減にして、そろそろキリをつける時期がきているのではないか。首相自らが毅然と、「日本は安全性を確認しながら、海洋放出を行います」と言えば済むことだ。「貴国の原発排水も安全確認をしてください」と付け加えるのもいいかもしれない。いずれにせよ、非科学的な言いがかりが永遠に続くはずはない。
廃炉への道は長い。皆、コツコツと頑張っている。今、首相の一言で、大きく一歩前進できることを心から望む。