中国は「海は日本の下水道ではない」と猛批判
ところが、事実とは違ったことばかり主張しているのが韓国と中国だ。前述のように、どこの原発でも、動かせば必ずトリチウムは出るので、原発国である韓国も中国もそれを、しかも実際には、日本より高い濃度で川や海に流しているのだが、しかし、この2国を相手にそんなことを言っても埒があかない。中国は自分たちのことはすっかり棚に上げ、「海は日本の下水道ではない」というスローガンで、東電を強硬に非難している。
また韓国も同様で、例えば日本海沿いの月城原発は、年間140兆ベクレルのトリチウムを、1982年の稼働開始以来ずっと海と大気中に放出してきたという。それに比べて福島第1が放出しようとしているのは、年間22兆ベクレル以下なので、比較にもならない。しかし韓国の一部の勢力がヒステリックに、危険だから放出をやめろと主張し続けている。
最近、ソウル市は、日本産と思われるすべての水産物や加工食品に対し、放射能検査を行った。在韓国コンサルタントの豊璋氏によるマネー現代(5月5日)の記事によると、ソウル市から結果の発表がなかったので氏が問い合わせたところ、すべてシロだったため発表を止めていたらしい。
しかも、それでも飽き足らず、一部の韓国メディアが、「日本の外務省幹部がIAEAに100万ユーロの政治献金をした」などという偽情報まで流し、外務省が事実無根だと否定するという一幕もあった。
IAEA事務局長が空港から出られない騒動も…
さて、その韓国からは、私が福島を見学した後の5月23、24日、専門家ら21人の視察団が第1原発を訪れ、ALPSの稼働状況などを確認したという。ただ、彼らはその後、「予定していたものはすべて見たが、設備の機能や役割についての分析、追加の確認が必要」として、安全性の評価については口を噤んでいた。おそらく、IAEAによる安全検証の報告を待っていたのだろう。
一方、日本との関係を重視する尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権はIAEAの評価を尊重という方針だった。だから、今回こそ一件落着するかと思いきや、どっこい、そうはいかなかった。野党側は常軌を逸した反日キャンペーンの手を緩めない。
とばっちりはIAEAにも及び、今月7日夜、野党「共に民主党」の招きでソウルに飛んだグロッシ事務局長は、「グロッシ、ゴーホーム」と叫ぶデモ隊に行く手を阻まれ、空港から出るだけで2時間もかかったという。その後の同党の執行部との会談でも、グロッシ氏への執拗な抗議が続いたと、朝鮮日報の日本語版が批判的に報じている。IAEAは曲がりなりにも国連の国際機関だから、完全にスキャンダルのレベルである。