年2%の金利負担の解消は本当に得なのか

だとしたら、この住宅ローンの残債を退職金ですべて完済する意味があるのかどうか、冷静に考える必要があります。

たとえば、住宅ローンで支払っている金利が年2%だとしましょう。一方、国内外の株式や債券に分散投資するバランス型投資信託の期待リターンを年4%程度と考えてみます。

では、退職金で2000万円のキャッシュがあった場合、その2000万円で住宅ローンを完済し、年2%の金利負担を解消するのが得なのか、それとも年2%の金利は払い続けるけれども、一方で年4%の期待リターンが得られるバランス型投資信託で運用し続けるのが得なのか、よく考えてみてください。

ボトルにお金を入れるスーツを着たビジネスマン
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しかも、住宅ローンを組む場合は、大概、団体信用生命保険(団信保険)に加入して、債務者が亡くなった場合、住宅ローンの残債はこの保険金によって完済される仕組みになっています。

定年時に住宅ローンが残っていたからといって、それほど心配する必要はありません。だから、定年後の生活費として大切な退職金を、目先の心理的な負担感を軽減させるために、住宅ローンの返済に回さないようにしてください。

働くのが困難になるまでは使わない

退職金は老後の大事な生活費です。自分の身体を動かして働くのが困難になり、本当の意味で貯蓄の取り崩しが必要になるまでは、使ってしまわないようにしてください。

そのうえで、仮に退職金を60歳で受け取ったならば、それを65歳までの5年間か、70歳までの10年間をかけて積立投資していきましょう。

厚生労働省の「賃金事情等総合調査」(2021年)によると、「大学卒、事務・技術労働者、総合職相当」の人が大企業に38年間勤務して定年退職を迎えた時に得られるモデル退職金は2528万円です。2000万円超ものお金を一時金で得られるのは、老後の資産形成をするうえで大いなる励みになるでしょう。

ただし、この金額はあくまでも「大企業」が前提であることには注意してください。東京都産業労働局の「中小企業の賃金・退職金事情」(2022年版)によると、大卒の人が定年退職を迎えた時に得られるモデル退職金の額は1092万円です。