消費者にとってはエコより肌にいいかどうかが大事だった

【吉岡】「雪肌精 クリアウェルネス」のデビューは好調とはいえませんでした。前述のように当時のコミュニケーションは、発売以来38年間培ってきた雪肌精ブランドの資産を有効に活用できていませんでした。

例えば、雪肌精 クリアウェルネスは、サステナビリティに配慮した商品設計で、外箱には段ボールを使っています。地球への優しさを体現する一方で、お店では外箱の状態で並んでいるため中身が見えず、なかなか「あの雪肌精ブランドの一つ」ということが伝わりにくかったのです。

雪肌精 クリアウェルネス
画像提供=コーセー
雪肌精 クリアウェルネス

そして、なによりお客さんにとっては、「商品が自分の肌に何をしてくれるか」が重要なはずなのに、ほかの要素ばかりをコミュニケーションしてしまい、長年で築いたブランド価値を伝えきれませんでした。

38歳の“長男”を筆頭に誰もが使える「雪肌精」

そうして考えたのが、発売から38年たつロングセラー商品の「薬用 雪肌精」を筆頭に、「いろんな雪肌精がありますよ」と訴える作戦です。

38年のロングセラー「薬用 雪肌精」(画像提供=コーセー)
38年のロングセラー「薬用 雪肌精」(画像提供=コーセー)

肌が敏感な人のための雪肌精もあるし、サッパリしている雪肌精もあれば、とろみと浸透感を両立させた雪肌精もあるので、どんな人でも自分に合った雪肌精を選べる。多様なニーズが広がる時代に合致できると考えたのです。

「薬用 雪肌精」が長男だとしたら、「雪肌精 クリアウェルネス」はそのきょうだい。長男と一緒に、「すべてのジェネレーション、すべてのジェンダーの人に使えますよ」というイメージを訴えることを提案しました。

社内では「新しいシリーズとして売り出していたクリアウェルネスをあきらめるのか」という受け止め方もありましたが、「あきらめているわけではなく、雪肌精全体を大きく育てるためにも、もう一度、「薬用 雪肌精」にも焦点を当て、雪肌精の哲学を伝える必要がある。多様な価値観のある時代だからこそ、選択肢を提供することが重要」というロジックで合意形成できました。チームのなかで納得できてからは進めやすかったですね。