「たられば」の懸念ばかりを持ち出しては議論を遅滞させる
筆者がそう考えていると、27日の定例会見で、日経新聞記者が「県リニア専門部会で対応を進めるというコメントが不明確だ」と指摘した。川勝知事は「取水抑制できる最大限以上に、もし水が出た場合はどうするのか、実現可能性がいま問われている」などと不思議な回答をした。
「実現可能性」とは一体、何か?
川勝知事はこれまで県議会などで、JR東海の「最大500万トン」という県外流出量以上の水が出た場合を想定する発言をしてきた。
県リニア専門部会委員が水収支の計算となる前提条件を変えた場合、県外流出量の「500万トン」が「5000万トン」にもなる針小棒大とも言える仮定の話を持ち出し、川勝知事はそれをうのみにした発言を繰り返した。
つまり、県専門部会で「たられば」の仮定の議論を行い、それで「実現可能性」を問題にしようとしているのだ。
さらに「渇水期にも取水抑制ができるのか等々、いくつかの論点がある」などすでに議論されてきた問題まで持ち出した。その上で、川勝知事は「専門部会でいくつかの論点が出る。その論点に即して実現ができるのか、実現が難しいとなるのか」と疑問を投げ掛けた。どう考えても、これまでの議論を蒸し返すだけであり、あまりにもムダである。
事業者のJR東海は、静岡県が懸念を持ち出せば、その懸念を解消するための回答を用意しなければならない。川勝知事は屋上屋を架してまで田代ダム案を妨害していくつもりなのだ。
水質や生態系など別の懸念まで持ち出す始末
29日の静岡県議会で、大石健司県議(自民)が「5月31日の建設促進期成同盟会で、知事は、リニアに一貫して賛成している、リニア大推進論者と表明した上で、田代ダムの取水抑制と発生土問題が合理的に解決すれば、(リニア問題には)何の支障もなくなる」との知事発言を確認した。
ところが、川勝知事は「期成同盟会での合理的に解決すれば何の支障もないとの発言は、2つの大きな課題である田代ダム取水抑制の実現性と発生土処理の適切性などが合理的に解決すれば、支障はなくなるということだ」などとここでも「田代ダム案の実現性」を問題にした。
さらに「水質や生態系の影響などこれまでのJR東海の説明はまだ不十分であり、解決には至っていない」など別の障害まで持ち出している。
川勝知事は田代ダム案さえ今後も妨害していく姿勢をはっきりと示している。同案と水利権との関係は主張できなくなったが、今後もさまざまな手を使って同案つぶしに躍起になるのは間違いない。
2020年当時、川勝知事はリニア問題によって「国論を巻き起こす」と息巻いた。現在もその考えは同じなのだろう。リニアが日本国にとって必要なのかどうかを議論すべきだと言うのだ。
日本国の未来を担うリニア建設の実現を本当に目指すのならば、政府は、川勝知事の“攻撃”を受けて立つべきだ。川勝知事を止めなければ、だらだらと時間ばかりが過ぎていくことになる。