すでに議論が出尽くした部会に議論を戻そうとする川勝知事
田代ダム案と水利権との関係をあらゆる場所で発言し、「反リニア」に徹する川勝知事の姿勢に危機感を抱いた流域の市町長らは「田代ダム案の協議を進めてもらいたい」姿勢を一致して示した。
島田市など流域市町長が、国が積極的に関与するよう要望、県の田代ダム案を進めない対応に不満をあらわにした。
流域関係市町の圧力を受けて、静岡県は6月14日、「田代ダム案が東電RPの水利権に影響を与えない、静岡県を含めた大井川流域市町は同案を根拠に水利権の主張をしない」などとする通知をJR東海に送った。
これで、田代ダム案について具体的な協議開始の環境が整った。
JR東海は22日、田代ダム案の協議開始を発表。これ対して、川勝知事は23日、コメントを出した。
「JR東海に対して、東電RPと協議を開始するよう繰り返し求めてきた」とした上で、「両社の協議が整い次第、県の地質構造・水資源専門部会(県リニア専門部会)で対話を進めていく」としたのだ。
議論すべきは流域市町長らが参加する別の協議会のはず
水利権を持ち出して東電RPの協力を撤回させようとしながら、表面的に協議開始だけを求めていた“裏事情”を一般の県民は全く承知していない。その上、意味のない県リニア専門部会との対話を求めているのだ。
これまで県リニア専門部会で、田代ダム案についてあらゆる疑問、意見が静岡県側から出され、JR東海はほぼすべてに回答してきた。東電RPの河川流量実測値から県外流出量と同量を大井川に放流することを詳しく明らかにした。
委員から「渇水期に水を戻せるのか詳細な記録を示せ」という重箱の隅をつつくような意見にも対応したほか、東電RPの資料に欠測があることまで問題にしたため、そのすべての資料を県専門部会に示している。つまり、県専門部会での対話はすでに終えているのだ。
国の有識者会議が指摘したように、田代ダム案に納得できるのかどうかは、県を含めた流域市町長ら関係者が参加する「大井川利水関係協議会」の場で行うべきである。
それを分かっているのに、川勝知事は田代ダム案がまとまったところで、“御用学者”で構成する県リニア専門部会に諮るというのだ。これには、何らかの意図があるとしか思えない。