ピンポイントに、その瞬間を思い出してもらうように質問する

パターン③ 商品をターゲットにぶつけて探す

ここまでの発想法はターゲットから引き出したエモを参考に、シチュエーションを考えるものでした。加えて、ターゲットに直接商品やサービスを提示して探るパターンもあります。

このときもエモの条件である「経験」「ハッピー」「コミュニケーション」を踏まえて考えます。例えば先ほどと同様にペンのマーケティングを考えているとして、ターゲットに「筆箱の中のどのペンがお気に入り?」と聞きます。

「このボールペンかな」
「へー、いつ買ったの?」
「いや、これは昔上司にもらったの」
「そうなんだ、いまの上司?」
「昔の部署の上司。3年前くらいにもらったかな」
「なんでプレゼントしてくれたの?」
「初めて契約取れたときに。みんなにくれたんだけどね」
「そうかー。その人との会話で覚えてることある?」

これだけでも「上司との思い出×ペン」の発想が生まれます。

あるいは、ターゲットが選んだのが修学旅行で買ったペンかもしれません。すると「ここでしか買えないペン」という訴求方法も見えてきます。

このとき、ふわっと「ペンに関する思い出は?」と聞いてしまうと、ある程度、みんな答えを持っています。ピンポイントに、その瞬間を思い出してもらうように質問します。

そうして思い出すシチュエーションは、ハッピーなもののほうが多いでしょう。それだけで、エモの条件を満たしているわけです。

【図表】商品とひも付くエモシチュエーションを考える3つのパターン
出典=『エモ消費 世代を超えたヒットの新ルール』(クロスメディア・パブリッシング)

受験、恋愛…多くの人が経験するシチュエーションから考える

共感を最も生みやすいのは、「限られた共通経験」です。例えば「パリに行ったことがある」という共通経験があるとしたら、「シャルル・ド・ゴール国際空港に着いたときのわくわく感」にとても共感します。

ただ、それではより多くの人の共感を呼ぶものにはなりづらい。エモシチュエーションを考えるとき、前提となるシチュエーションはみんなが経験したことがあるところから考えたほうが発想しやすいと言えます。

多くの人に共通する領域として、最もわかりやすいのが「恋愛」です。読者のみなさんも、イメージしやすいのではないでしょうか。

それに、「学校」や「受験」もエモが生まれやすい領域です。社会人になってからはそれぞれバラバラの生活をしていて、共感できる部分がどんどん少なくなっていきますが、中学校まではみんなが経験しています。

あるいは、「家族」です。一概には言えませんが、親、祖父母、きょうだいなどとの関係性は共通項の多い部分です。

それから、ライフイベントもあります。入学式、卒業式、体育祭、文化祭。年齢層が上がってくると成人式や結婚式、同窓会です。「初めての一人暮らし」といったものもあります。

音楽も共通する部分が多い領域です。昔聞いていた曲などはほかの人も共感しやすいでしょう。それに音楽は感情にダイレクトに影響するので、エモい可能性が高いと言えます。好きなアーティストの歌詞から発想してみるのもいいでしょう。