みんなですごろくを覗き込むシチュエーションはエモい

パターン① 商品を直接エモにひも付ける

より多くの人に共感してもらうためには、多くの発信があったほうが有利です。1つの商品やサービスについて、5つ以上のエモシチュエーションを考えます。

商品にひも付いたエモシチュエーションの考え方は大きく2つです。商品を起点にエモシチュエーションを考えるか、別の発想から考えたエモシチュエーションを商品にひも付けるか、です。

まずは前者について考えます。理想としては、その商品の機能的な価値からエモを考える方法です。

例えば、ポリフェノール配合の商品の機能的な価値として、「美肌」と捉えたとします。そこから発想していきます。

・朝、肌の調子がよかったから家族に自慢した
・会社に行ったら同僚に「肌綺麗だね」と褒められた
・先輩に「コスメ、何使ってるの?」と聞かれた

本書の第2章でお話ししたエモの条件、「経験」「ハッピー」「コミュニケーション」が内包していることを意識しながら考えましょう。

次に、その商品を消費すること自体がエモいパターンもあります。

僕たちが企画し、Z世代を中心にヒットした「ウェイウェイらんど!」という商品があります。お酒とすごろくがセットになった商品で、乾杯マスやゲームモードなど、お酒を楽しみながら遊ぶことができます。

これは、商品を使って遊ぶこと自体で、会話が生まれるように設計しています。

企画段階では、みんなですごろくをしているとき、どんな状況がエモいかを考えました。

思い付いたのは、それぞれのマスに止まったとき、「何が書いてあるの?」とみんなで覗き込む、頭がぶつかりそうな距離感です。そのため、この商品ではマスの中の文字を敢えて少し小さくしています。

このように、その商品を使う状況を想定し、そこにちょっとハッピーなコミュニケーションをプラスする考え方です。

「あったあった。懐かしいね」と共感されるか

パターン② ターゲットから聞いたエモを起点にする

商品そのものからは、エモを発想しづらい場合もあります。

例えばペンについて、「ペンからはエモシチュエーションを思い付かないな」「ペンは1人で使うものだし、コミュニケーションを考えづらいな」となったときに、まったく違うものとひも付けられないかを考えます。

まずはターゲットから聞いたエモシチュエーションの中に、商品とひも付けられるものがないかを考えましょう。例えばワインで考えてみます。

「ワインは好きだけど普段特にこだわることはなくて、コンビニで買ったりファミレスで飲んだりしている」というターゲットがいたとします。そんな人から「自分の生まれた年のワインをもらったとき嬉しかった」というエモシチュエーションが出たとします。

これをペンにひも付けてみると、「1997年生まれのためのペン」という発想が出てきます。実際に共感を呼ぶかどうかは後で考えます。どんどん数を出していきましょう。

次に、ターゲットから聞いた「アートを見ている時間」というエモシチュエーションとペンをひも付けられないかと考えたとします。直接ひも付けるのが難しければ、「絵を描くときのエモって何があるだろう?」などと発想を広げます。

そうして例えば、「中学校の美術の時間で自分の左手を書いたな」と思い出したとします。チームのみんなでそのことを話してみます。

・「手ってよく見ると皺がたくさんあるって思ったな」
・「手相って右手と左手で違うんだよね」
・「爪を書くのって難しいんだよね」

そこにコミュニケーションの要素が加わった発想が出てくれば、エモシチュエーションになり得ます。

・「意外に手の大きい奴がいて、大きさ比べしたな」
・「人差し指と薬指どっちが長いかで性格診断しなかった?」

それにみんなが「あったあった。懐かしいね」と共感するのであれば、「中学生から70歳まで使えるペン」という発想も出てきます。

中学生の頃に左手を描いたペンを、70歳になっても使っている。そうした状況を設定することで、「アート×ペン」のエモシチュエーションを生み出すことができます。

これがコーヒーとペン、アートとペンをどうにかひも付けようと考えてしまうと、なかなか発想が出てきません。たくさんのエモシチュエーションから広げて考えてみましょう。