自己責任化が進む日本の末路
そればかりではない。これらは、けっして財力の多寡で受けられるサービスに差を生じさせてはならないものだ。私たちは法のもと平等であり、その生存権は憲法第25条で国家が保障するよう規定されているはずだ。国家がその責任を放棄し、あとは自己責任と自助努力でなんとか賄えという社会は、あまりにも冷たく歪んでいるとは言えないだろうか。
この「認知症保険」について言えば、これだけ高額な保険料を掛け捨てで支払える財力の無い人にとっては別世界の商品である一方で、支払える財力のある人にとっては、わざわざ買わなくても良い商品だ。
この商品は、まさに国家が負うべき責任を放棄してきた現状、社会が生み出したものの典型とも言えるのではなかろうか。いや、むしろこの商品は、私たちに公的保険制度とはなにか、そして自助・自己責任社会に突き進む「臨死期の民主主義国家」のもとで企業がいかなる商売を生み出すのかについて考える機会を与えてくれる“教材”としては、案外「スグレモノ」と言えるのかもしれない。