諸条件を満たせば一時金100万円がもらえるが…
そしてこの定義にもあるように、認知症は、よく知られているアルツハイマー病だけでなくそれ以外の疾患や服薬によっても引き起こされ得るものであるため、保険加入の際には医師の診断書は不要で簡単な告知書のみでよいとされてはいるものの、過去に脳血管疾患、脳腫瘍や水頭症、てんかんやパーキンソン病、うつ病、統合失調症、アルコール依存症などの診断・治療歴がある場合は加入できないことがあるので注意が必要だ。
さらに商品によっては、心筋梗塞や心房細動、弁膜症、狭心症といった循環器疾患、パニック障害や神経症、心因反応などの既往もないことを加入の条件としているものもあるため、まず加入の段階で対象者はかなり選別されることになる。
気になる保障についていえば、ある商品では「初めて認知症と医師により確定診断されたとき」に「認知症一時金」として100万円が支払われるとされている。まず、「軽度認知障害」と医師により確定診断されたときに「軽度認知障害一時金」として5万円が支払われる、その後初めて認知症と確定診断されたときに残りの95万円が支払われる、という2段階での保障を謳っているものもある。
軽度認知障害の診断はかかりつけ医でも困難
この軽度認知障害というのは(MCI:Mild Cognitive Impairment)と言われるもので、記憶力や注意力など認知機能に若干の低下がみられるものの、日常生活に支障をきたすほどではない状態、いわば健常と認知症の中間の状態のことを指す。最近この軽度認知障害への保障を「売り」にしている商品もちらほら見かけるが、例えば前記の確定診断がつけば5万円という保障は、いったいどれだけの意味があるといえるだろうか。
そもそもこの軽度認知障害の診断をつけるのは、街の多くの「かかりつけ医」では困難であると思ったほうがいい。神経内科の専門医など、認知症の専門知識とスキルを十分に持ち、経験豊富な医師であれば不可能ではないかもしれないが、一般内科クリニックで、これらの専門医に出会える機会はそう多くない。
つまり「最近ちょっと変だから、かかりつけ医の先生に診断してもらえば保障が下りるかも」と安易に考えてはいけない。「確定診断」の根拠が曖昧なままでは、保険会社も保険金を支払うのは難しいからだ。