「親からの過剰な期待」は子にとって危険な薬物

ある独特の衝動に駆られると、スポーツから得られる多くのプラス効果が削がれる恐れがあります。勝利に酔いしれたいという思いがそうです。

このような欲求は、親が子供に向ける大きな期待や心配といった、他のあらゆる感情と入り混じって試合中に表れ、危険な薬物に侵されているような状態になります。勝ち負けによって気持ちの浮き沈みが激しくなるのです。

親、コーチ、ファンという立場でありながら、テニスでサービスエースが取れなかったとか、野球で中継プレーをうまくできなかったとか、アイスホッケーでしっかりとボディチェックができなかったとか、バスケットボールでジャンプシュートを見事に決められなかったとか、そんなことで11歳の子供を怒鳴りつけるといったことがしょっちゅう起こります。

「何がなんでも絶対に勝つ」などと自分は考えもしないと思い込んでいる人でも、こんなふうに我を失ってしまうことがあるのです。

子供の成長のためには時には勝利を犠牲にすべき

試合中でなくても、勉強の成績が悪かったり、チーム内の決まりを破ったりした選手を注意しようとするコーチに、親が横槍を入れることがあります。そうした選手たちは、勝利に貢献できるからという理由で、悪いことをしても許されてしまうことすらあるのです。

人格はスポーツが形成するのではありません。人が育むのです。親やコーチが優れた人格を育てるには、場合によっては勝利を二の次にして、公平かつ安全で、チームのためになること、さらには子供の先々の成長を優先しなくてはならないということです。

親や周りの大人から無茶な期待をかけられたり、感情をぶつけられたりすることなく、子供が競技スポーツを楽しみ、いろいろなことを学べるようにしてやらなくてはなりません。