「質問攻めの反省会」は絶対NG

子供との良くないやり取りの例として挙げられるのが、試合の帰り道の車中で質問攻めにしたり、とがめたりしてしまうケースです。

「あのコーチ、どうしてもっと試合に出してくれないのかしら? 何か言ってなかった? まったく、何を考えてるのかしら」
「なんで反則なんか取られたんだ? 審判に歯向かうようなことでも言ったのか?」
「どうしてもっとシュートを打たない? もっと積極的にいかないと」
「バテバテだったな。だから早く寝ろって言ったじゃないか」
「勝とうという気がないの? もっと本気で頑張らないと、1軍入りできないでしょ」
「いつになったらわかるんだ? 何度も言ってるだろ。ああいう場面こそ、もっと踏ん張らなきゃ」
「どうしたんだ? 今日はお前らしくなかったぞ」

こうした「試合後の質問攻めの反省会」は、子供のやる気を削ぐもので、スポーツから得られる喜びも奪い去ってしまいます。他のことでは冷静な親でも、このように競技のことで熱くなると、子供を援護したり、奮い立たせようとしたり、褒めてやったりしようとするあまり、行き過ぎてしまうことはよくあるのです。

中には、公然と不満を訴える親もいます。アメリカのある都市部の日刊タブロイド紙に、「観客を校内から締め出しに」という見出しが躍りました。この不幸な事件では、高校のあるアイスホッケーの試合をめぐって保護者と選手とファンとの間で大乱闘が起こったのです。後日、高校のアスレチック・ディレクターの判断で、その再試合は無観客で行われることになりました。

「勝てた?」より「楽しかった?」

リチャード・D・ギンズバーグ、ステファン・A・デュラント、エイミー・バルツェル(著)、来住道子(訳)『スポーツペアレンティング 競技に励む子のために知っておくべきこと』(東洋館出版社)
リチャード・D・ギンズバーグ、ステファン・A・デュラント、エイミー・バルツェル(著)、来住道子(訳)『スポーツペアレンティング 競技に励む子のために知っておくべきこと』(東洋館出版社)

親であれば、若い選手たちの模範となるよう心がけなくてはいけません。時には、まずは先走らず、呼吸を整えて、スポーツを通じて本当は子供にどんな経験をしてほしいのか、改めて考えてみることです。「勝てた?」。そんな問いかけも、親としての存在感を示す、次のような声がけに置き換えることができます。

「楽しかった?」
「プレーはどうだった?」
「何か新しいことはつかめた?」
「全力は出せた?」
「チームプレーはできた?」

こうした声がけを意識することは、人格を育てるという意味で言葉以上の効果を発揮するのです。

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