敗因①「既存のブランドを売るもの」と勘違い

失敗の本質は、①NFTを「既存のブランドを売るもの」と勘違いしたこと、②運営がNFT供給量と特典を後出ししたこと、という2点にまとめられると思います。1つずつ見ていきましょう。

そもそもNFTの良さが活きるのは、「すでに確立されたブランド」を売ることではありません。「ホルダーと一緒にブランドを創る」からこそおもしろいのです。フリーミント(NFTの無料配布)を行うNFTプロジェクトが多いのも、そのためです。つまり、高額な値段設定は、必ずしも得策ではない。たとえ一流ブランドを確立している企業であっても、NFTでは、既存の価値を売るのではなく、新たな価値を創出すべきなのです。

にもかかわらず、ポルシェは「ポルシェ911」というブランドを売るNFTにしてしまった。これが失敗の本質①の意味するところです。

敗因②一方的に供給量を変え、特典を後出しした

さらに②として、ポルシェは、運営がNFT供給量と特典を後出しするという悪手を打ってしまいました。

なぜこれが悪手といえるかというと、NFTは需給で価格が決まるものだからです。

つまり先に購入したNFTホルダーの同意なしに、後から供給量を変更するのは、たとえ結果的にNFTの価格が上がったとしても裏切り行為に近いということです。特典の後出しもまったく同様のロジックで、既存ホルダーは運営側を信じられなくなるというわけです。

NFTとは「ホルダーと一緒にブランドを創る」もの、つまり運営とホルダーが一緒になって創り上げるプロジェクトです。そうである以上、「何を目指すプロジェクトなのか」という目的やビジョンを、できる限り、リリース前に説明すべきでした。こうした点も欠如したまま、リリース後に一方的に供給量を変え、特典を後出ししたとなれば、ホルダーの批判を浴びても仕方ありません。