「この会社は化ける」と確信した、元キーエンス社長のひと言

株主総会での発言が重要なのは社長だけではありません。たとえばソフトウェアテスト会社のSHIFT(シフト)の株主総会では、こんなことがありました。

ソフトウェア開発では、必ずバグが生じます。ソフトウェア開発において、バグをなくすためのテストは不可欠な作業ですが、これにかかる時間やコストは膨大なものです。

従来この作業はアウトソーシングできず、みな社内でやるしかありませんでした。そこへバグを調べる作業を行う会社として、初めて立ち上げたのがシフトです。

この会社も1回目の株主総会から参加しましたが、このときは成長性に少し疑問を感じました。とはいえマーケットは膨大なので、そのまま持ち続けることにして、2回目の株主総会にも参加しました。

この時の株主総会は、社外取締役3名を選任する決議が行われた年で、この中の1人にキーマンがいたのです。2000年からキーエンスの社長を務めた佐々木道夫氏です。佐々木氏の挨拶を聞いて、私は「この会社は化ける」と確信しました。

約20年で株価は20倍、時価総額は150倍に

ご存じの方も多いでしょうが、キーエンスはFAセンサーをはじめとする検出・計測制御機器メーカーで、営業利益率50%という驚異的な数字を誇ります。社員の平均年収が2182万円(22年3月)で、日本の製造業の上場企業で最も年収が高い会社としても知られます。

株価も、20年ほどで20倍になりました。上場した1987年時点で1000億円だった時価総額は最大時で約15兆円になり、150倍ぐらいに成長したことになります。なかでも急拡大する時期に、立役者となったのが佐々木氏です。

新役員として挨拶した佐々木氏の発言で、とくに成長を確信したのが最後のセリフです。

「私はキーエンスが急拡大する時期に社長を務めていました。当時キーエンスは伸びると思っていましたが、同じ感覚をこのシフトに感じています」。つまり佐々木氏はシフトをキーエンスに例えたのです。

キーエンスは、我々の世界では超優良企業です。キーエンスがそこまでの会社にした佐々木氏なら絶対にやってくれると思ったのです。