足かせになった「メディアの三要素」

「なぜ、週刊誌が売れなくなったのか」については、さまざまな要因が複層的に絡み合っている。ここでは、印刷メディアとネットメディアを比較しながら、整理してみる。

メディアを形づくるには「メディアの三要素」と呼ばれる「情報」「伝送路」「端末」が欠かせない。「情報」は、新聞や週刊誌では「記事」、放送なら「番組」、ネットなら「コンテンツ」と言い換えることができる。

「伝送路」は、「情報」を運ぶ流通ルートで、新聞や週刊誌では「トラック」、放送なら「電波」、ネットなら「通信ネットワーク」が該当する。「端末」は、運ばれてきた「情報」を再現する道具で、新聞や週刊誌は「紙」、放送は「テレビ」や「ラジオ」、ネットは「パソコン」や「スマートフォン」ということになる。

この三要素を、印刷メディアとネットメディアで比べてみる。「情報」の更新頻度は、週刊誌が1週間に1回(新聞は1日に多くて2回)しかできないのに対し、ネットはいつでも発信できる。最新の情報を得たい読者にとって、その差は歴然だ。

週刊誌がネットメディアに優るものが見当たらない

「伝送路」をみてみると、週刊誌は、印刷・製本した後、トラックで配送し、書店やコンビニで、ようやく読者が手にすることができる。ところが近年、書店が激減し、駅のキヨスクもほとんど姿を消し、コンビニでも雑誌を置かない店が急速に増えている。

週刊誌を読みたくても、入手する場所がなくなりつつあるのだ。これに対し、ネットメディアは、通信ネットワークを通して直接利用者に「情報」が届く。回線容量が貧弱だった昔ならいざしらず、今や「5G(第5世代)の超高速の通信規格で世界中につながるようになり、接続のストレスはなくなった。用紙代、印刷代、配送代などはほとんどかからないため、流通コストは比較にならない。

積み重ねられて置かれた雑誌
写真=iStock.com/temmuzcan
※写真はイメージです

「端末」にしても、日常生活で便利ツールのスマホより重いものをもつことがなくなった人たち、とくに若年層にとって、かさばる紙の印刷物を持ち歩くことは、苦痛とさえいわれる。

つまり、どこから見ても、週刊誌がネットメディアに優るものが見当たらない。したがって、売れなくなるのは当然なのである。

NHKは受信料、民放は広告料という基盤がある

ビジネスモデルからも見てみたい。

週刊誌の場合、基本的に、読みたい人が毎号、お金を出して購入するというスタイルだ。どれだけ売れるかわからない部数を長年の経験とカンで印刷して発送する、きわめて不安定なシステムといえる。

これに対し、同じ印刷メディアでも、新聞は月ぎめ購読の宅配が主流なだけに、新聞販売店を通じて読者の顔や数を確認できるという点で、週刊誌よりも少しましなモデルということができよう。