財政赤字はある程度拡大させ続けて大丈夫

もちろん融資を受けた企業は、他社への支払いに口座の資金を使うが、融資を受けた企業から支払われた資金は、支払いを受けた企業の預金として、これも戻ってくるのだ。

だから、銀行は最初の預金の何倍も融資をすることができる。これを経済学では「信用創造」と呼んでいる。銀行はお金を創り出すことができるのだ。

これを「最初に集めた預金の範囲内でしか融資をしてはならない」という条件をつけて銀行を縛ったら、銀行経営は立ち行かなくなってしまう。

財政も同じで、自国通貨を持っている国は、財政均衡に縛られずに、より柔軟な財政政策をとることができる。財政赤字は、ある程度拡大させ続けて大丈夫なのだ。

若手の財務官僚の半数は財政均衡主義に疑問を持っている

最近、金融教育家の男性から興味深い話を聞いた。

彼は、財務省の若手官僚と交流があるそうなのだが、若手の財務官僚の半数は、財政均衡主義に疑問を持っているのだという。

若手の財務官僚の半数は財政均衡主義に疑問を持っている(※写真はイメージです)
写真=iStock.com/mapo
若手の財務官僚の半数は財政均衡主義に疑問を持っている(※写真はイメージです)

ただ、そのことを省内で口に出すことはできない。もしそんなことを言ったら、出世コースから外されるか、最悪の場合、地の果てに飛ばされてしまうからだ。

だから中高年の上司の前では、財政均衡は大切だと言い続けないといけない。そうして、何度も財政均衡を口にするなかで、だんだん財政均衡主義が体中をむしばんでいく。そのマインドコントロールは強烈だ。

長い時間を大蔵省や財務省ですごした官僚は、退官しても、財政均衡主義を主張し続ける。古巣に気を使っているわけではなく、それが正しいと信じてしまっているからだ。