法学部出身だから、あまり経済学を勉強していない

元本を返す余裕資金がなければ、借り換えをして、また10年後に先送りしてもよいし、日本銀行に国債を買わせてもよい。

そもそも日本銀行は、単純に紙幣を刷って、資金を供給しているのではない。何かを買って、その代金として日本銀行券を支払っているのだ。

日銀が資産として保有する商品でもっとも安全確実な商品は、国債だ。だから、日本経済への資金供給を確保するためにも、国債の発行は不可欠なのだ。

ただ、大蔵省の官僚にはそうした理解がなかった。

大蔵省(財務省)のキャリア官僚というのは、東大法学部出身者が多い。出世コースに乗っている人に限れば圧倒的に東大法学部だ。

大蔵省(財務省)のキャリア官僚は東大法学部出身者が多い(※写真はイメージです)
写真=iStock.com/jaimax
大蔵省(財務省)のキャリア官僚は東大法学部出身者が多い(※写真はイメージです)

法学部出身だから、あまり経済学を勉強していない。

だから、財政均衡、すなわち税収の範囲内に歳出を収めるという経済学的にはありえない話を「正しい」と思い込んでしまったのだ。

銀行は預金の何倍もの融資を実行できる

経済学には、一般常識とは異なることがいくつもある。

たとえば、銀行の貸出だ。

銀行は、国民から預金を集めて、企業に貸し出している。一般国民は、預金額の範囲内でしか融資ができないと思い込んでいる。

しかし、現実には、銀行は最初に集めた預金の何倍もの融資を実行することができる。なぜかというと、銀行は企業に対して、現金で融資をすることはほとんどなく、大部分が小切手で融資金を渡す。

融資を受けた企業は、その小切手を銀行口座に入金するから、貸出金は銀行の預金として戻ってくるのだ。