容体急変

ところが、入院から2日目に母親の様態が急変。嘔吐おうとを繰り返し、食事も取れなくなる。主治医から電話があり、「倒れた衝撃で腸が骨に挟まれて腐ってきています。このままにしていると危ない。すぐに病院に来てください」と言われ、鈴木さんは再び病院へ駆けつけた。

母親は腸閉塞を起こしていた。主治医によると、熱中症で体力を消耗しているうえ、2014年に起こした脳梗塞と持病の心臓弁膜症があるため、手術中に心不全を起こす可能性があり、「すぐに手術をしないと命が危ない」という。

「もし、手術中に心不全を起こすようなことがあったら、喉を切開して気管カニューレを入れますが、同意されますか?」

このとき、姉と連絡がつかず、病院へ来ることができたのは鈴木さんだけだった。鈴木さんは気が動転し、主治医の説明に理解が追いつかない。

「どうしたらいいのでしょう? 先生にお任せするしかないです」

5時間後、母親はICUに入った。手術中、母親は危険な状況に陥り、気管切開手術を受けた。人工呼吸器に助けられながら自発呼吸をしているが、母親は大きな口を開け、肩で息をしていて、とても苦しそうだった。

気管切開して呼吸を確保しているシニア
写真=iStock.com/PongMoji
※写真はイメージです

「熱中症で倒れ、顔面打撲、鼻骨折、頬骨折。これが治ったら家に連れて帰れると思っていたのに、こんなに重篤なことになるなんて、私も姉も思ってもいませんでした」

このとき介護認定を受けると、母親は要介護5。鈴木さんは毎日車を20分走らせて母親の面会に来ていたが、帰る時はいつも「明日も生きていてね」と祈るような気持ちで病院を後にしていた。

「外での熱中症はよく耳にしていたし、私も畑仕事をするので気をつけていましたが、家の中での熱中症に自分の母がなるなんて……。この頃の私は、不安で不安でどうにかなりそうでした」

きっかけは熱中症だが、持病も複数あり、高齢だったため、重篤な事態に陥ってしまったようだ。