「ずる賢い詐欺師や宗教勧誘員ほど押し売りはしない」と詐欺・悪徳商法ジャーナリストの多田文明氏は警鐘を鳴らす。良い人ほど他人を信じて騙されるという巧妙な手口を解説。6月23日(金)発売の「プレジデント」(2023年7月14日号)の特集「頭がいい話し方、バカの話し方」より、記事の一部をお届けします――。
呼び出す男性詐欺画像
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緻密な情報収集能力と聞くさじ加減の絶妙さ

詐欺師や悪質商法業者らと数多く話をしてきてわかったのは、彼らの口のうまさです。相手の心にすっと入り込み、一瞬で心をつかみます。しかしその裏には、緻密な情報収集能力の高さがあります。詐欺グループが摘発されると、闇名簿が押収されます。そこには、名前、年齢などの個人情報以外に「人が良い」「断れない」など、性格がこと細かに書きこまれています。

みなさんもご存じのオレオレ詐欺では、息子や孫になりすました人物が「オレ、俺だけど」と電話をかけます。すると人の良い高齢者ほど「タケシかい」と、聞き覚えのある子どもや孫の名前を自分から発してしまいます。

そこで、詐欺犯は「そうだよ」と答えて話を進めます。「今、1人なの? このところ暑くなってきたね」と世間話をしながら、相手が1人暮らしかなどの情報を収集していきます。そして「電話番号が変わったから、メモしておいて」と言って電話を切ります。これは詐欺の前触れ電話(アポイント電話)と呼ばれるものですが、詐欺犯は最初の電話では情報収集に徹します。そのうえで詐欺電話をかけるので、多くの人たちが騙されてしまうわけです。

6月23日(金)発売「プレジデント」(2023年7月14日号)の特集「頭がいい話し方、バカの話し方」では、本稿のほか、「知的で伝わる話し方」をテーマに取り上げています。伝える力がアップする「頭がいい人の話し方の秘密」を満載しています。