お金持ちになれない人の回答

この答えこそ、その人の持つ“お金持ち”のイメージを現している。ここでの回答はいくつかに分類される。

「いや、ただ稼ぎたいのであって、何に使いたいかは特に決めてない」
という、何も決めてないがとにかくお金持ちになりたい人。

「いいところに住んで、良いクルマに乗って、おいしいものを食べたい」
という、漠然と生活の質を上げようとしている人。

「1億円の家に住んで、ベンツに乗りたい」
という、具体的に生活の質を上げようとしている人。

「旅行に行ったり、欲しかった高級時計を買いたい」
という、娯楽や物欲を満たそうとしている人。

このように回答する人の多くは、“お金持ち”になりたいのではなく、お金を“使いたい”のだ。お金を使って手に入れるものは、もっと良い、少なくともいまよりはずっと良い生活だ。

確かに治安が良く清潔で、医療や教育の体制が整い、利便性の良い街で暮らすに越したことはないだろう。

しかし、本当にダイヤモンドの指輪やピアス、高級腕時計は必要なのだろうか。お金持ちになりたいのではなく、お金を“使いたい”人の多くは、お金を使うことで“優越感”を得ている。これは非常に強い快楽を伴い、一時的に強烈な満足感を得ることができる。ただ、この快楽はすぐに元に戻り、“より強い”快楽を求めて、さらに多くのお金を使うことを求める。

こうして、実際に多額のお金を稼ぎ出す人であっても、真の意味で“お金持ち”になる人は実は少ない。まとめて言うならば、彼らはお金持ちになりたいのではなく、お金持ちと“思われたい”のだ。私は、このグループに属する人たちを、資本主義と承認欲求の罠にかかった“大量消費者”と呼ぶようにしている。

バスタブに収まり、札束をばらまいてみている男性
写真=iStock.com/Nattakorn Maneerat
※写真はイメージです

お金持ちになる人の回答

稼いだお金を何に使いたいかという問いに対する、真の意味で“お金持ち”になるグループの回答は、上記とは性質が異なる。

このグループの回答は、

「投資の資金の元手にしたい」
「そのお金を元手に多額の資金を借り入れて、事業を起こしたい(または、不動産を買いたい)」

といった、いわゆる“レバレッジ”をかける方に意識が向いている。

彼らの多くは、お金が“増える”ことよりも、“減る”ことを極端に嫌がる。だからこそ、何も生み出さない消費(例えばブランド物のアクセサリー)にはほとんど目もくれないかわりに、長期的に利益を生み出すものには惜しみなく資金を投入する。

そんな彼らにも、お金を増やすからには最終的には何かに使う欲求があるだろう。「何のためにお金を増やすのか?」と問いかけてみると、驚くべきことに、ほとんどが同じような回答をする。

「“お金”から自由になるために」
「“お金”によって阻まれる人生から解放されるため」
「選択肢を多く持てるようにしておくため」

といったものだ。

彼らは、何かの物を手に入れるためではなく、自分の状態のためにお金を増やす。ちなみに、彼らに物欲がない訳ではない。彼らは、自分の状態を高めるためであれば、躊躇ちゅうちょなく大金を使う。