成功する勇気を持たないといけない

私には、思い当たる節がかなりあった。というのも、過去を冷静に振り返ってみた時に、私は本当にプロ野球で“成功したい”と思っていたのだろうか。どこかで、一生懸命練習している自分、2軍でもがいている自分、ひたむきに頑張っている自分に酔い、そこで満足していたのではないか。

1軍の世界で、真剣勝負の舞台にさらされ、そこで明確な結果を突きつけられるよりも、「2軍のホープ」でいる方が圧倒的に楽なのだ。チャンスさえ与えられれば、時期さえよければ、アイツはきっと活躍できると言われている方が、自尊心も保たれ、結果にさらされることもなく、ある意味で安泰でいられる。実は、深層心理ではこれを望んでいたのではないか。

私自身の経験も含めて言えることがある。どれだけ頑張っても結果が出ないとしたら、あなたがそれを望んでいるからに他ならない。結果が出ない方の未来を、自らが望んで選び取っているのだ。なぜなら、その方が自分にとって利益が大きいからだ。

結果にさらされなくていい、ひたむきに頑張っているポジションでいられる方が、楽だからだ。なんだかんだ言って、そのままの自分が好きで、変わらない方がいいと潜在的には思っているのだ。成功することによるリスク、責任を負う大変さ、自己変革によるストレスを受け入れることが怖いのだ。

本当に結果を出したいのであれば、自分が成功することを許さなければならない。そして、成功する勇気を持たなければならない。

ベンチの柵にグローブがかけられている
写真=iStock.com/Ed Wolfstein
※写真はイメージです

欲しかったポルシェに乗れなかった理由

以下は、数年前に私がコーチングを受けていた女性コーチとの会話である。

「いま、欲しいものは何?」
「うーん、ポルシェが欲しいです」
「へぇ〜。どうしたら、買えるの? それ」
「もっと稼いだら、買えますね」

「ふーん。じゃあ、あなたが誰だったら、ポルシェにふさわしいの?」
「えっ、誰だったら?」
「うん。いまないってことは、ふさわしくないんでしょ?」
「そういうもんですかね。誰って、どういう意味ですか?」

「あなたの中では、どんな人がポルシェにふさわしいの?」
「うーん、もっとエレガントな人ですかね」
「じゃあ、あなたがもっとエレガントであれば、ポルシェに乗れるの?」
「そう、思います」

「ちなみにさ、あなた、いま稼いでないんだね」
「えっ、どうしてそれを……」
「だって、“もっと稼いだら”って、稼いでない人が言うセリフよ」
「た、確かに……」

「“稼いでない”って自分で認識している人が、稼ぐことはないわよ」
「えっ、じゃあどうすれば……そうはいっても、稼いでないですよ、いま」

「稼ごうなんてしなくていい。ただ、エレガントであればいいのよ」
「エレガントで……ど、どのように?」

「あなたさ、お金稼ぐの得意?」
「えっ、いや、時と場合によるというか、不得意とは思いませんが……」
「あのさ、得意? って聞かれたら、0.2秒で『得意』って言って。そう思ってなくても。もう一回聞くね。あなた、お金稼ぐの、得意?」
「はい、得意です。お任せください」
「そう、それでいい。あとはエレガントに生きていればね」