スタバは、もともと豆を焙煎して販売するビジネス

このように、「ブランディング」とは、どんな便益とどんな独自性があるかがお客さまに伝わってはじめてできるものであり、ある意味では「結果」の産物といえます。たとえば、スターバックスコーヒーの「くつろげる場所」というイメージも創業当初からあったわけではなく、スターバックスがお客さまの反応を見ながら少しずつつくっていったものです。巷には、スターバックスのようにソファーを置いて店内を落ち着いた空間にしたり、スタッフにフレンドリーな接客をさせたりすればサードプレイスができる、それがブランディングだと語っている専門家もいますが、そんな単純なものではありません。

スターバックスの成り立ちを考えてみると、そのことがよくわかります。スターバックスは、もともとコーヒー豆を焙煎して販売するビジネスでした。その後、ハワード・シュルツさんという人が、豆の販売だけではなく、カフェもはじめることを提案します。

焙煎コーヒー豆
写真=iStock.com/D-Keine
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きっかけはイタリアで見たエスプレッソのスタンディングバー

シュルツさんは仕事でイタリアに行ったときにエスプレッソのスタンディングバーで楽しそうにおしゃべりをしながらコーヒーを飲む人たちを見て、スターバックスでもこうした事業を展開しようとしたのです。そのため、スターバックスも最初はスタンディングで、ソファーもないし、落ち着ける店でもなかったわけです。そして、それまで薄いコーヒーが主流だったアメリカでは、スターバックスの深煎りした濃いコーヒーがおいしいと評判になります。

しかし会社としては、やはり豆の販売を主体にしたかったため、シュルツさんはスターバックスを辞めてエスプレッソ系のコーヒーを提供する別の店をはじめます。そこでもまだスタンディングで、テイクアウトが主体でした。これが若い人々に受け入れられ、シュルツさんは次々と店舗をオープンしていきます。さらにスターバックスの商標登録を買い取り、スターバックスのブランドで店舗を拡大していったのです。