2023年末のインフレ率予想は最大6.5%にも

その影響を回避するために、ロシアではさまざまな方策を用いて制裁をかいくぐり、海外に資金を持ち出そうとする人が増えた。ウクライナ紛争の発生直後、一部の富裕層はビットコインなどの“暗号資産(仮想通貨)”を用いて海外に資産を移したようだ。アラブ首長国連邦(UAE)などで仮想通貨を用いて不動産を購入し、ルーブル安から逃れようとする人は増えたと報じられた。

また、2023年6月、ロシアでは闇市場でルーブルを売って米ドルなどに変え、海外の銀行に送金する人が増えているとも報じられた。財政の悪化懸念を背景に、ルーブル建てのロシア国債が債務不履行に陥るとの懸念を持つ国民も増えているだろう。こうして外国為替市場でルーブルはドルなどに対して下落した。

ルーブル安の影響から、徐々にロシアの消費者物価指数は上昇し始めた。6月9日、ロシア中銀は事前予想通り、政策金利を7.50%に据え置いた。今後の経済の展開予想として、2023年末時点のインフレ率は4.5~6.5%に上昇するとの予想を中銀は示し、年内の利上げの可能性が高まっているとの見解を示した。

人々が行き交うモスクワの繁華街
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国外脱出がルーブル安に拍車をかける

今後もルーブルは、米ドルなどに対して下落する可能性が高い。足許では、原油価格の下落リスクは高まっている。欧米では、物価が高止まりしている。連邦準備制度理事会(FRB)や欧州中央銀行(ECB)は金融引き締めを継続する公算が大きい。それによって、世界全体で需要は減殺される。原油価格には追加的な押し下げ圧力がかかりやすくなるだろう。

今後、ロシアの財政悪化懸念は高まり、経済運営の厳しさも増しそうだ。そうした懸念から、ロシアからの脱出を考える人も増えている。ウィズコロナによって多くの国で経済活動が正常化する中、タイを訪問するロシア人観光客は急増した。一部には、そのままタイで生活したいと考えるロシア人観光客もいると報じられた。

ロシアから海外に移住しようとする人が増えれば、ルーブルの下落圧力も高まる。ロシアの経済環境や、ウクライナ紛争の先行き不透明感の高まりによって、社会心理も不安定化するだろう。それに伴い、海外に資金を持ち出し、ドルに替えて資産を守らなければならないと考える市民も増える可能性は高まる。