「巨大な鉄道網」が抱えている最大の弱点
インド鉄道省の公式サイトによると、毎日約1万1000本(うち7000本が旅客)の列車が運行している。1日の列車利用客数は約1300万人に上る。
ウォール・ストリート・ジャーナル紙によると、インドの鉄道網は世界第4位の規模。空路の利便性が向上してはいるものの、鉄道は依然として、インド国民の移動を支える足であると言える。
しかし、鉄道網はイギリスの植民地時代に建設され、かねて老朽化と多発する鉄道事故が問題となってきた。CNNによると、2021年には全国で約1万8000件の鉄道事故が発生し、1万6000人以上が死亡した。鉄道事故の67.7%は列車からの転落、列車と人の衝突だったという。
大規模な列車事故も繰り返されてきた。2005年には南部アンドラプラデーシュ州で、洪水で流された線路を横断しようとした列車が脱線し、少なくとも102人が死亡。2016年、北部ウッタル・プラデーシュ州で線路の整備不良による脱線事故が起き、140人以上が死亡した。
インドのモディ首相は、経済成長の原動力になる鉄道網の近代化に力を入れている。日本の新幹線システムが採用されるムンバイ・アーメダバード間の高速鉄道プロジェクトのように、大都市間の高速鉄道や大規模貨物輸送の整備に焦点があてられる傾向が強い。
ただ、鉄道の近代化は乗客の安全が確保されてはじめて実現するのではないか。経済成長のために安全を犠牲にするのは本末転倒だ。280人以上の尊い命を一瞬で奪ったインドの列車事故は、安全管理の重要性を改めて訴えかけている。