生活保護受給者のギャンブルに対する批判の根底

よく、生活保護受給者に対して、「パチンコや競馬をするなんて、けしからん」と、与党の政治家が言いますよね。行政側がそうした、生活保護受給者は世間に頭を下げながら生きていくべきだといった姿勢で受給者に対しているということが、何度か問題になっています。

罵声を浴びせる側は、「俺たちが汗水たらして働いて得た給料から税金が引かれ、それが生活保護費の元手になっているのだから、もらっている人間が楽しんではいかん」と主張します。この考え方に対して、「それは間違っている」と納得させるのはなかなか難しいのです。

実際に「生活保護受給者にもパチンコや競馬で遊ぶ権利がある」という主張には、多くのバッシングが起こりました。そうした批判をした人々の多くは、普通のサラリーマンやビジネスマンでした。

パチンコ
写真=iStock.com/Conchi Martínez
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彼らの意識には、「生活保護受給者は努力が足りないのだ」という考えが根底にあるのでしょう。「働かないでお金をもらって遊んでいるとは何事か!」という考えは、人間には根強くあるのです。

働かないで商品を買うのは等価交換の原理に反する

では、彼らが依拠している原理とは何なのでしょう。

私は、それこそ等価交換の原理であり、その原理が生み出した消費者マインドだと考えています。

彼らは、自分の労働を売って、賃金を買い取り、その賃金で自分の労働力の成果である商品を買い戻すというサイクルのなかに生きています。そして、隣に働かないで商品を買っている人がいれば、激しい不公正感を抱くのです。

これは、等価交換の原理に反していると。不平等ではないかと。

もし、そこで贈与交換的な価値観を思い出す精神的な余裕があれば、「この人たちが今、仕事ができない・収入がないのは、社会の責任でもあるわけだから、社会から贈与を受けてしかるべきだ」という考え方が生まれるはずです。しかし、そこへはなかなかたどりつかないのが現実です。