統合失調症の患者が認知症を併発した場合、どのようにケアすればいいのか。看護師の西島暁子さんは「ある患者さんの場合、認知症の症状がひどくなり、自分ではほとんどなにもできなくなってしまった。トイレは10年単位で汚れが蓄積し、便座も真っ黒な状態で、訪問看護師による生活面のケアが必要だった」という――。
※本稿は、西島暁子『魂の精神科訪問看護』(幻冬舎)の一部を再編集したものです。
何度も警察沙汰になっていたBさん
Bさんは統合失調症で病識がなく、関わるのが非常に難しかったケースの一つです。
被害妄想が強く、高校生のときの同級生に対して強い妄想を抱いていました。
Bさんいわく、同級生が夜間自宅に乗り込んで、さまざまな嫌がらせをするというのです。もちろんそのような事実はいっさいありません。
しかしBさんはそうした妄想を抱いたあげく、恨みつらみを書き連ねた手紙を同級生に送りつけたり、さらには夜中や明け方に同級生の家に押し掛けてドアをガンガン叩きながら怒鳴り散らしたり、非常に迷惑な行為を繰り返していました。
こんなことをすれば当然、相手は警察を呼びますから、これまでに何度も警察沙汰になって警告を受けていました。
しかしどれほど警察から警告を受けようとも、本人には病識がないため、まったく止めることはなかったのです。
ドロドロに伸びきったそばをすすった
主治医や看護師、保健師などが地域の保健所に集まり、困難ケースとして会議をするほど、Bさんは関わるのが難しいケースでした。
ただ、私のことは罵りながらもかろうじて受け入れてくれていたようです。Bさんにとっての唯一の話し相手として、私に気を使ってくれることもありました。
しかし、Bさんの見当違いな気遣いに非常に困らされたことも時にはありました。
ある時、Bさんは私にそばをごちそうしようと、訪問時間の何時間も前に注文して待ち構えていました。
冷やしたぬきそばを一緒に食べよう、という電話があって行ってみると、何時間も前に注文したそばがテーブルの上に置かれていました。