「自由度の高い冒険」に海外メディアも注目
本作でプレイヤーは、ハイラル王国の異変に立ち向かう勇者・リンクとなる。敵の集団を繰り返し倒しながらより上位の装備を入手し、異変の元凶である巨悪を砕くことが目的だ。その過程において、自分だけの発想力で戦闘を有利に運び、地形の難所を越え、行く手を阻むパズルと謎を解く――。その爽快感と興奮が世界のプレイヤーを虜にしている。
たとえば数多くのモンスターがひしめく敵陣に、正面から切り込んで剣を振るうだけが能ではない。英テレグラフ紙の記者は、剣で樹を切り倒して丸太を作り、そこにロケットを縛り付けて敵陣に撃ち込んで一網打尽にしたと語る。敵を散らせるのであれば、ほぼどんな手段でも認められる。
プレイヤー自身でさえ半信半疑だった荒唐無稽な戦術が、時として思いがけず見事なまでに炸裂する――。その爽快感こそが、本作の醍醐味のひとつだ。
テレグラフ紙は、お仕着せの解法に留まらない柔軟なプレイが可能となっていることに感嘆し、「そう、『ティアーズ オブ ザ キングダム』は、創意と驚嘆に満ちた、並外れたタイトルなのだ」と評価している。総じて、あなたは英雄ですよ、と状況設定を「語る」ゲームが多いなか、知恵とひらめきを試す場が与えられたティアーズ オブ ザ キングダムは、まさに英雄だと「感じさせてくれる」ゲームになっているという。
プロデューサーの青沼氏は「ズルは楽しいもの」と語る
大抵のゲームにおいて、開発側が想定しないアプローチは、ズルやチート(不正行為)とみなされることも少なくない。ところが本作は、開発側が用意した王道パターンだけを正とせず、プレイヤーたちのあらゆる創意工夫を受け付ける。それでもなお、ゲームバランスが崩壊しない堅牢さと懐の深さを備えている。
ヘドロをまとった敵を討つシーンでは、水の能力を持った仲間と共闘して泥を洗い落としても良いし、手持ちの剣に放水アイテムを合成して振るだけでも効果が得られる。1つの状況に対し、「これでないと前へ進めない」という縛りは、どんな場面でもほぼない。
ダンジョンに相当する「祠」の解き方も、アプローチは多様だ。純粋に謎解きと向き合うプレイヤーから、巧みな発想で壁を乗り越えるなどして駆け抜ける強者まで、十人十色のスタイルがソーシャルメディアを賑わせている。
『ゼルダの伝説』シリーズ総合プロデューサーを務める任天堂の青沼英二氏は、米ゲーム・インフォーマー誌のインタビューに応じ、「ズルは楽しいものです!」と語っている。開発姿勢として、意図的に“邪道な”クリア方法の余地を残したと氏は明かす。
青沼氏は続ける。「近道を見つけるのは、楽しいことです。苦労せずにすむのであれば、誰だって簡単な方法を探したい。本作にはそうした要素を残したかったんです」「たくさんのやり方を用意し、1つの謎解きに対して多くの答えがあって、そしてどれもが正解となり得る。そんな開発スタイルにたどり着けたことを、私は幸せに思います」