ファンを集めた「キャンプイベント」が転換点

キャンプを愛する立場から、最高品質のモノづくりでファンを魅了するスノーピークだが、ずっと順風満帆だったわけではない。キャンプブームの陰りと共に、思うように商品が売れない時期も経験した。そこで1998年に初めて開催したのが、ファンの声を直接聞くためのキャンプイベントだった。30組のファンと一緒にキャンプをしながら、腹を割って本音で話してみると、「モノは良いけど高すぎる」「お店の品揃えが悪い」といった不満が続出したという。

当時は商品を問屋経由で販売していたため、中間流通コストが発生してしまい、どこで何が売られているかも正確に把握・管理できていなかった。それを、ファンの声に応えるために、問屋を通さずに販売店と直接取引する大改革に踏み切った。その結果、中間流通コストを削減することで、もともと8万円だったテントを5万9800円まで下方修正するなど、商品全体で20~30%の価格改善を実現した。また、約1000店あった販売店を、品揃え豊富に扱ってくれる約250店まで絞り込み、ファンに満足してもらえる売り場環境を整備した。こうした取り組みが功を奏し、2000年頃から業績を改善し、現在まで続く成長軌道を進み始める転換点となった。

「ファンと繋がるイベント」に注力している

ファンと繋がることでビジネスを軌道修正できた成功体験を踏まえ、スノーピークは、専門誌などへの広告費を削減し、その代わりに、ファンと直接交流できるイベントの運営を充実させていった。

社長や幹部を含む従業員が、ファンと一緒にキャンプをするイベントは、今では「スノーピークウェイ」と呼ばれる定番イベントになり、毎年20回ほど全国各地で開催されている。そのキャンプの夜、焚火を囲みながら社員とファンが本音で語り合う「焚火トーク」は、キャンプでの困りごと、商品への要望などを本音で話し合い、クレームへの即対応や、ニーズに応えた商品・サービスの開発に結び付ける大切な場になっている。

焚火
写真=iStock.com/Graeme Kennedy
※写真はイメージです

累積ポイントが高い「ブラック」以上の会員ランクのコアなファン限定で、経営幹部と一緒に焚火を囲みながらキャンプをする特別なイベント「スノーピークウェイプレミアム」も年に3回ほど開催されている。ここでは、コアなファンと経営層がより踏み込んだ議論を行い、今後の方針を一緒に考える場になっている。他にも、年2回の感謝祭「雪峰祭」など、ファンと繋がる場づくりが多種多様に展開されている。