勢いを支える熱狂的なファンの存在
アウトドアは、一過性のブームでは終わらずに、中長期的なトレンドとなって広がっている。矢野経済研究所の調査によると、日本のアウトドア用品・施設・レンタル市場は右肩上がりの堅調な成長を続けており、コロナ禍が始まった2020年に微減したものの、2021年にはすぐに成長軌道に戻り、2022年は約3500億円の市場規模まで拡大している。コロナ禍でも発展を続けた、数少ない成長市場の1つである。
人気のアウトドア用品の市場は、世界で高い人気を誇るパタゴニアやノースフェイス、国内ブランドとして会員数100万人超で高い支持を集めるモンベル、他にも数多くのブランドによる激戦が繰り広げられている。その中で、「最も勢いのあるアウトドアブランド」といえる存在が、スノーピークだ。
高品質・高価格帯のキャンプ用品を主力とするスノーピークは、2012年には36億円だった売り上げを、2022年にはじつに8倍超の307億円まで伸ばすことに成功している。この10年間にわたって勢いが失速しない要因には、「スノーピーカー」と呼ばれる熱狂的なファンの存在がある。
「高く売れる」ブランドとして成長している
スノーピークを熱狂的に愛するファンたちは、その魅力を自ら積極的に発信し、ファン同士の交流も盛んだ。ファンが目立つと、それに反発する「アンチ」も生まれやすくなるが、ファンが新たなファンを呼ぶ現象も生まれやすくなる。アンチが多いというのは、ブランドの個性が強く、ファンが目立っている証拠でもある。そのアンチの発生も含め、スノーピークの商品やファンは、キャンプ場でもSNSでも人目を惹き、ファン拡大の影響力を発揮している。
日本のブランドが、ファンから熱狂的に支持されて商品・サービスを「高く売れる」ブランドになることはとても難しい。自動車や時計でも、ジュエリーやアパレルでも、「高く売れる」ブランドになれているのは欧米ブランドばかりだ。国内ブランドは、「安い割に品質が高い」というコストパフォーマンスに優れている方が支持されやすい。アウトドアであれば、モンベルがその良い例で、商品のコストパフォーマンスに優れ、会員特典も初年度からお得だ。そうした中、「高く売れる」ブランドとして成長を続けるスノーピークは、日本のブランドの中でも珍しい成功事例といえる。山井太社長は「アウトドアにおけるエルメスのような存在」になることを目指していたという(日経ビジネス「「グランピング」は地方創生とつながっている」2018年2月2日より)。