「マインドの問題」にした瞬間変化できなくなる
【時田】うまくいかないのを、よく「マインドの問題だ」と言ってしまいがちな風潮がありますが、僕はそうではないと思っています。マインドのせいにすると、「もうそれ以上は解決策がない」と言っているのと同義です。やはりマインドや風土を変えるには「時間がかかる」と言い訳をしていると思えてしまうんですよね。
やはり「仕組み」や「仕掛け」に問題があるということです。役員会議も単なる報告の場ではなく、チャットも使いながら進行することで、インタラクティブな議論を同時並行で動かせる。これがまさにツールの力だと思います。だから、マインド論で考えることをやめるのではなく、やはり「こういうツールを使って変えてみよう」という一歩目のメッセージが大事になるのだと思います。
【今井】最近、時田さんは「行動変容」とよく言っていますよね。僕はそれが正しいと思っていて、「行動」というのは数えられるんです。動いた回数というのはデジタルに結果が残る。マインドというのは人の心の中ですから、本当は何を考えているかはわからない。少なくとも行動を取れば、何らかの結果が出ます。行動すれば、マインドセットは後からついてくる。
社内SNSは日本企業最大の規模に
リッジラインズのコンサルタントとして富士通の改革に一緒に参加させてもらっている立場からいうと、富士通は本当に日本中心のドメスティックな文化があった会社だったわけです。それが今や英語と日本語を使ってチャットで意見をやりとりできるぐらいにはなっています。富士通の社内SNSは、多分日本企業で最大のユーザー数になったと思います。
「変われないかもしれない」と思っていた富士通が、一緒にやっていく中で大きく変わってきているという事実は、我々コンサルティング会社としては非常に嬉しいことですし、それを公表させてくれるという意味では、ありがたいクライアントでもあります。
【時田】富士通グループ12万人のうち約3分の2が日本人で、本社も日本にあるため、やはり日本的な風習やドメスティックな文化が大勢を占めていることは事実です。しかし、外国籍の役員から議論の中で「ケミカルリアクション(chemical reaction)とは、すごく興味深い言い方をしますね」と言われたことがありました。
いわゆる「化学反応」を期待しているという文脈を面白がっているのです。要は多様性なんですね。日本人と外国人がいろいろなツールを使いながら、できるだけ共通言語で話そうとする。これによって化学反応が起きる方が、マインドセットを変えるよりも力強いな、というのが実感としてあります。